ミニ・レビュー
2000年にメジャー・デビューした4人編成バンドによる珠玉のベスト盤(後編)。透明感を帯びたメロウ・チューン「プラネタリウム」、人気RPGの主題歌としても人気の疾走感あふれる「カルマ」ほかヒット・シングル満載で、研ぎ澄まされてゆく彼らの世界観を追体験できる。
ガイドコメント
2013年7月3日リリースの、バンド史上初となるベスト・アルバム。「supernova」「カルマ」「涙のふるさと」「花の名」「宇宙飛行士への手紙」ほかのヒット・シングルを含む、2005〜2010年までの“BOC”の軌跡を凝縮した一枚。
収録曲
01プラネタリウム
四畳半を広げたくてプラネタリウムを作る、というストーリーに心奪われる。ロマンティックな舞台装置から、ちょっぴり切ない方向へとシフトするのも藤原ならでは。華美にしすぎないシンプルなアレンジも“四畳半”感をサポート。
02カルマ
『テイルズ オブ ジ アビス』シリーズの主題歌となった11枚目のシングルは、「sailing day」路線のアップ・テンポのロック・ナンバー。“業”を意味するタイトルが象徴するように、もう一人の自分を思わせる詞世界は深みがある。
03supernova
「カルマ」との両A面で発表された11thシングル。タイトルは“超新星”を意味するが、“熱が出たりすると〜”というミニマムな視点の歌詞とアコースティックな音色に驚かされる。やわらかで力強い、スケール豊かなミディアム・チューン。
04ギルド
アルバム『ユグドラシル』収録曲で、後にこの楽曲をモチーフにした人形劇も制作されたナンバー。“人間という仕事を与えられてどれくらいだ”という歌いだしは衝撃的。人生を一歩引いた目線で見ながら、生きていくうえで大切なことを教えてくれる。
05涙のふるさと
“会いに来たよ”のリフレインが耳に残るロッテ「airs」CMソングとなった12thシングル。キャッチーなサビに引っ張られるように、アレンジも王道ながらポップで心地よい響きが前面に出ている。エモーショナルなヴォーカルも好印象。
06花の名
13枚目のシングルは映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』主題歌。アコースティック・ギターと歌を中心に構成された前半の形でも成立しているが、バンドが合流してからの豊かなスケール感は白眉。藤原のメロディメイカーとしての魅力が凝縮されている。
07メーデー
大きなステージが映えるロック・テイストを作り上げた14枚目のシングル。16ビートで力強いリズムを奏でるドラムと、ジャカジャーン!というギターによる異なるアプローチが楽しい。“メーデー(=救難信号)”のようなノイズもいいアクセント。
08R.I.P.
墓碑などに刻まれ、“安らかに眠れ”という意味を持つ略語をタイトルに冠した15thシングル。変拍子なども取り入れた緊迫したバンド・アンサンブルに、美しくもどこか恐ろしさも抱かせる相反する魅力を持ったメロディが映える疾走感あふれるナンバー。
09Merry Christmas
「R.I.P.」との両A面で発表された15thシングルは、タイトルどおりのクリスマス・ソング。鈴の音をはじめとした王道のサウンドにアイリッシュ的なアクセントを取り入れることで、独自性を華麗に取り入れてみせるアレンジがニクい。
10HAPPY
ジャキジャキしたギターの音色やハンドクラップなど、アメリカン・ロック的なアプローチが新鮮な16枚目のシングル。シンプルなタイトルとは裏腹にちょっぴりシニカルな視点を持ったメッセージ・ソングで、それゆえ心に強く響く。
11魔法の料理〜君から君へ〜
NHK『みんなのうた』に起用されたことでも話題を呼んだ17thシングル。“叱られた後にある晩御飯”をモチーフにしたファンタジックな物語は、藤原らしさに満ちている。ごく個人的なエピソードを描いているが、リアリティと温度を持って胸に飛び込んでくる。
12モーターサイクル
ギター、ドラム、ベースがそれぞれ別々のリズムを奏でるアンサンブルや変拍子など、「乗車権」を思わせるシリアスなテイストのナンバー。目まぐるしく変化する人生を描いた言葉は一見すると冷たく感じるが、底には強い意志が息づいている。
13宇宙飛行士への手紙
4つ打ちのリズムと豊かなギターのアンサンブルで幻想的な世界を生み出した18枚目のシングル。想像力に訴えかける象徴的かつ断片的な情景を刻み込みつつ、壮大なストーリーを描き出す藤原の手腕には脱帽。流れ星のようなギターのフレーズも美しい。