ミニ・レビュー
アルバム2枚同時リリースのうちの1枚で、中村達也やKenKenらなじみのミュージシャンとの演奏や一人多重録音などで構成されている。中でも、チバユウスケとギター2本だけでデュエットした曲が白眉の出来。全体としてマイナー調のメロディが多く、シリアスなムードのディープな作品だ。
ガイドコメント
2013年10月23日リリースの17thアルバム。PENTAX「K-50」CMソング「Always」や「カーラジオ」といったシングルや未発表音源を含む、全10曲を収録。20周年記念として16thアルバムと同時リリース。
収録曲
01カーラジオ
緊張感をもたらすギター・リフで幕を開けるロック・ナンバー。メロディの展開は多くないが、誰かに向かって叫ぶように歌う斉藤ならではの力強いヴォーカルが印象的。カーラジオから流れるロックンロールをモチーフに、挑発的に背中を押してくれる。
02恋のサングラス
チバユウスケ(The Birthday)との共作&共演によるナンバー。それぞれがエレキとアコギを弾く変則的な弾き語りだが、シンプルな作りゆえ、二人が声で勝負できるヴォーカリストであることが際立っている。映画のカット割のような歌詞も鮮やかだ。
03Cheap&Deep
オルガンをアクセントに据えたロカビリー・ナンバー。“Cheap&Deep”という酒をかたむけながら、少年時代の思い出を反芻。青いザリガニにまつわる示唆に富んだエピソードが印象的で、うらぶれたバーが自然と思い浮かぶサウンドも見事だ。
04Happy Birthday to you!
ドラムに中村達也、ベースにKenKenという強烈な3ピースで奏でられたバースデー・ソング。ロック畑を代表する組み合わせなだけにバースデー・ソングとは思えぬソリッドなロック・サウンドに仕上がっており、そのミスマッチが楽しい。
05流星
辻村豪文、玉田豊夢、藤井謙二らツアーでのサポートとしてもおなじみのメンバーを迎え、ジャズのフレイバーを取り込んだ大人なナンバー。そのサウンドと呼応するように歌詞もセクシーな言葉が並ぶ。流星のように消えていった女性に想いを馳せる。
06MUSIC
これ以上ないシンプルなタイトルを冠した一曲。打ち込みを使用していながら、ジメっとした重たい雰囲気を作り出しているのが見事。サビで繰り返される“たかがMUSIC されどMUSIC”というひと言に、彼の絶妙な力の抜け加減が表われているよう。
07天使の猫
山口寛雄(100s)が作編曲に加わったミディアム・バラード。自分で捕らえた鳥をくわえたノラ猫。都会の真ん中で訪れた“小さな野性”との出会いが大切なことを思い出させてくれた、というストーリーが出色。教会音楽風のメロトロンがいいアクセントだ。
08Always
「PENTAX K-50」CMソングに起用された42枚目のシングル。軽快なビートにキャッチーなメロディなど、斉藤和義のひとつの方程式ともいえる要素が詰まったポップ・ロック・ナンバー。サーカス団を思わせる中盤の変化もユニークだ。
09それから
藤井謙二、辻村豪文らツアーのアポート・メンバーが作/編曲に参加したミディアム・ナンバー。本当の幸せを手に入れるためには手放さなくてはならないものもある、という格言の導入をギターの購入で描くあたりがニクい。心温まる歌詞とサウンドが見事にマッチ。
10メリークリスマス
聖なる夜を舞台に、大切な人への想いを歌ったクリスマス・ラヴ・バラード。“二人なら掃除も早いしハモれる”などの照れ隠しから、“愛してるよ”へと繋がる歌詞にぐっとくる。「Happy Xmas(War Is Over)」を思わせるラストの音の洪水は感動的。