ガイドコメント
名曲な「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」ほか、7曲ものヒット・シングルを生んだロック史上に燦然と輝く、84年のモンスター・アルバム。ブルースが描ききった“アメリカ”のさまざまな局面。
収録曲
01BORN IN THE U.S.A.
ベトナム帰還兵の絶望的な嘆きを歌った曲。ラウドなビートと分厚いキーボード・サウンドによるパワフルなロック・チューン。「俺はU.S.A.で生まれた」というフックの一節のせいで愛国主義者の歌だと誤解する人もいたが、実際には逆。全米9位のヒットを記録。
02COVER ME
擬似レゲエ・ビートに乗って唸りを上げるリード・ギターをフィーチャーした曲。過酷な時代に疲れ果て、自信を喪失した男が「俺を守ってくれ」と恋人に懇願する。男性が弱くなり、女性が強くなってきた時代の産物、ともいえるかもしれない。全米7位のヒットを記録。
03DARLINGTON COUNTY
カウベルとキーボードが目立つカントリー・ロック調の陽気な曲。60年代のC.C.R.を思い出させる。NYからダーリントン郡の田舎町まで仕事を探しにやって来た男2人組のおかしな物語。サックス・ソロもイカしてるが、能天気な“シャララ”コーラスが最高。
04WORKING ON THE HIGHWAY
けたたましい2ビートに乗って歌われるカントリー・ロック調の曲。未成年の少女と駆け落ちしたために監獄にぶち込まれ、おまけに重労働の刑を科せられた男の嘆きの歌。歌詞の割には元気な曲だが、まったく懲りていない男が主人公だから、これでいいのだ。
05DOWNBOUND TRAIN
シンセサイザーをフィーチャーしたサウンドをバックに、ビートにスプリングスティーンの無表情な歌声が虚しく響く曲。仕事も恋人も失ってしまった男が「下りの列車に乗ってる気分だ」と嘆いている。苛酷な時代に疲弊したアメリカを象徴する曲のひとつ。
06I'M ON FIRE
時計を連想させるリム・ショットのリズムをバックに、抑制を効かせたヴォーカルで燃え上がるような欲情を表現してみせる曲。R指定に近いような歌詞の激しさと穏やかな歌声との絶妙のミスマッチが楽しめる。スキャットも効いている。全米6位のヒットを記録。
07NO SURRENDER
「学校よりも3分間のレコードから多くのことを学んだ」という秀逸な一節で知られる名曲。力強いビートに乗って「俺たちはいつまでも忘れないと誓い合った/決して退却しない/決して降伏しない」と歌われるこの曲は盟友スティーヴ・ヴァン・ザントに捧げられた。
08BOBBY JEAN
力強いカウントから始まるパワフルなロック・チューン。悲しみを乗り越えたポジティヴなサウンドをバックに、去っていった親友へ率直に、そして誠実に語りかける。「ノー・サレンダー」同様、バンドから脱退した盟友スティーヴ・ヴァン・ザントに捧げられた曲。
09I'M GOIN' DOWN
効果的なハンド・クラッピングが1950〜60年代のポップ・ソングの記憶を呼びさますロックンロール・チューン。恋人との仲が上手くいっていない主人公の鬱屈した感情の爆発を、懸命に抑えようとしているかのようなヴォーカルが印象的。全米9位のヒットを記録。
10GLORY DAYS
ミディアム・テンポのR&Bサウンドをバックに、友人たちの若き日の栄光の日々と彼らの現在の生活が歌われる。ハイスクールのヒーローやマドンナも今では冴えないオジサンとオバサン。「まあ、いいじゃないか」という楽天的なノリが救い。全米5位のヒットを記録。
11DANCING IN THE DARK
スプリングスティーンが一晩で書き上げたという曲。孤独と退屈の日々に苦しみながら爆発しそうなストレスと闘っていた当時の彼の心境がストレートに表現されている。シンセサイザーを大胆にフィーチャーしたサウンドが新基軸だった。全米2位のヒットを記録。
12MY HOMETOWN
地方都市で暮らす男の8歳から35歳までの半生を歌ったバラード。不況のために工場が閉鎖され、職を失った男が寂れた故郷の町に別れを告げる。彼は父親と同じセリフを息子に言っているが、その意味は大きく変わってしまっている。全米6位のヒットを記録。