ガイドコメント
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の公開を記念して、主演女優ビョークの作品を再リリース。本作は、彼女がソロ・デビューを飾った初アルバムだ。カリスマ性のある独特の音楽世界が魅力的。
収録曲
01HUMAN BEHAVIOUR
Soul II Soulを手掛けたネリー・フーパーを起用した、アルバム『デビュー』からのリード・シングル。大地を揺るがすようなティンパニーを効かせたパワフルで生々しいサウンドが、肉欲的に絡みつく。
02CRYING
孤独を叫ぶように歌いあげる4つ打ちのラブ・ソング。シュガーキューブス在籍時代からダンス・ミュージック好きを公言していたビョークらしい、シンセ・リフと印象的なベース・ラインからなるシンプルな構造の曲。
03VENUS AS A BOY
アルバム『デビュー』に収録のミディアム・ビート・チューン。インディアン・ストリングスやグラウンド・ビートが垣間見られるアレンジによって、エキゾティックな彩りを持ったビョーク・ワールドが満ちあふれている。
04THERE'S MORE TO LIFE THAN THIS
ウエットな感覚が漂うダンス・ミュージック。ミルク・バーのトイレで録音されたこの曲では、途中ビョーク自身がドアを開けて入ってくるような不思議なカット・インが入る。ビョークの“映画のようなリアルさ”という言葉が不思議な形で実現されている。
05LIKE SOMEONE IN LOVE
喧騒とハープから始まる、『デビュー』の中でも屈指の美しさを持つ曲。ハープ奏者はディーン・マーティンやフランク・シナトラとも仕事をしているコーキ・ヘイル。なんと当時80歳のタフな老婦人でした。
06BIG TIME SENSUALITY
プロデューサーであるネリー・フーパーの持ち味が十二分に発揮されているダンサブルで良質なポップ・ミュージック。曲中で繰り返される”楽しむには勇気がいる”というフレーズはビョーク自身の姿勢そのもの。
07ONE DAY
子供のような、ピッチをいじったような声で始まる囁くような1曲。シンプルだがジャンル分けしにくい個性的なビート構造を持つ1曲。予言のような歌詞の世界観はビョークの歌唱力があってこそ表現できるものだろう。
08AEROPLANE
全体的にモンド・ミュージックのような雰囲気をもつ不思議な1曲。ホーン・セッションと民族音楽風味のミステリアスなビートは、エキゾチシズムな趣味の域を越えて、オリジナルなポップスとして完成している。
09COME TO ME
ピアノやストリングス、そしてビョークのウィスパー・ヴォイスの優しげな響きと、歌詞の包容力をもった母性の世界観が見事に調和している。平坦なベース・ラインも手伝って、癒しの要素を持った一曲になっている。
10VIOLENTLY HAPPY
フロアのピークにもってこられそうなほど完成度の高いビョーク・ハウス。ダンス・ミュージックのクリシェを随所に散りばめながらも、歌詞に暴力的な愛情という二面性を持たせることでイージーリスニングの域に留まらない一曲になっている。
11THE ANCHOR SONG
フリー・ジャズのようなホーン・フレーズと海底を思い起こさせる静かな歌唱が絡み合う、静かな一曲。「ヴァイオレントリー・ハッピー」のシングル・カットには別mixとしてアコースティック・ヴァージョンが収録されており作品の静けさを際立たせている。
12ATLANTIC
リコーダーのみでアレンジされた、童謡のように牧歌的で簡素な曲。一つ間違うと退屈なだけになりそうな曲も、圧倒的な表現力を持った歌い手によって、いつの時代も飽きがこない強度を持った作品になっている。
13PLAY DEAD
ボーナス・トラックとして後から収録された映画『ヤング・アメリカンズ』の挿入歌。ドラマティックなオーケストレーションとダビーなベース・ライン、そして何よりビョーク自身の独特の歌唱法があってこそ成立する大作。