ミニ・レビュー
66年発表の4枚目。いよいよレイ・デイヴィスの本領発揮、諧謔、自嘲、センチメントにあふれた名曲の数々が登場。ヴィム・ヴェンダースも『アメリカの友人』で「僕の心に深く(Too Much On My Mind)」を使ってたっけ。7曲プラスでこの価格。マストです。★
ガイドコメント
1966年発表の4枚目。フォーク・ロック・サウンドを軸にしつつも、他のビート・バンドと一線を画す、さまざまなサウンド要素が詰まった1枚だ。名曲「サニー・アフタヌーン」収録。
収録曲
01PARTY LINE
電話の呼び出し音から始まる痛快なビート・ナンバー。デイヴ・デイヴィスのヴォーカルがフィーチャーされている。タイトルにもなっている“パーティー・ライン”は電話版の出会い系サイトみたいなもの。イントロで電話に出るのはマネージャーのG・コリンズ氏。
02ROSIE WON'T YOU PLEASE COME HOME
結婚してオーストラリアに移住したデイヴィス兄弟の姉ローズをイメージして書かれたといわれるナンバー。歌詞ではロージーの帰りをひたすらに哀願していて、マイナー系の調べにハープシコードが効果的に絡みついている。
03DANDY
アコギの弾き語りから始まるフォーキーなバラード。ディランのパロディみたいなユーモラスな曲調はいかにもレイ・デイヴィスらしいが、女たらしの友人ダンディを皮肉っぽく揶揄した歌詞も彼らしい。ハーマンズ・ハーミッツによるカヴァーが全米5位のヒットを記録。
04TOO MUCH ON MY MIND
戦前のトーチ・ソングを思わせる美しいメロディのバラード。ハープシコードをフィーチャーした、煌びやかなサウンドをバックに歌われる神経症的な歌詞はいかにもレイ・デイヴィスらしい。ゲイツ・オブ・エデンのサイケデリックなカヴァー・ヴァージョンも要チェック。
05SESSION MAN
ニッキー・ホプキンスが奏でるハープシコードをフィーチャーした陽気なポップ・ソング。ニッキー以外にはあり得ない「トップ・ミュージシャン」の「セッション・マン」を主人公にした歌詞も楽しい。こういったことを粋にやってしまえるのもレイ・デイヴィスならでは。
06RAINY DAY IN JUNE
派手な雷鳴のSEで幕を開けるバラード。不気味なコーラスをフィーチャーした幻想的なサウンドをバックに、悪魔や小人も登場する神秘的な歌詞が歌われる。雨季の雷をヒントに過剰なまでにネガティヴに暴走してみせる想像力もレイ・デイヴィスならでは。
07A HOUSE IN THE COUNTRY
若者相手の商売で儲けた成金の青年実業家の生活を揶揄したビート・ナンバー。「田舎に別荘とデカいスポーツカーを持っている」というフックの一節がやたらに繰り返されるところがおかしい。プリティ・シングスのカヴァーが全英50位の小ヒットを記録している。
08HOLIDAY IN WAIKIKI
波の音で幕を開けるハワイ風味のロックンロール・チューン。アメリカ的に観光化されたハワイを皮肉っぽく描いた歌詞がいかにもレイ・デイヴィス。「草の葉に見えたスカートもプラスティック製だった」という一節がひどくおかしい。ハワイアンなギター・ソロも傑作。
09MOST EXCLUSIVE RESIDENCE FOR SALE
美しいメロディと皮肉っぽい歌詞による珠玉のポップ・ソング。成金の青年実業家が放蕩の果てに文無しになり、寝室が10室もある豪邸を売らなきゃならなくなった、という歌詞がいかにもレイ・デイヴィスらしい。問答無用の名曲。コミカルなコーラスも楽しい。
10FANCY
インド音楽の効果を採り入れたバラード。シタールのようなサウンドをギターで再現している。タブラのように聴こえるパーカッションも効果的。愛や知覚について語る哲学的で神秘的な歌詞も面白い。キンクスとインド音楽は意外に相性がよいと思わせるナンバー。
11LITTLE MISS QUEEN OF DARKNESS
ラヴィン・スプーンフルを思わせるラグタイム・ミュージック調のラブ・ソング。レイ・デイヴィスがロンドンのディスコで出会った躁鬱病気味の女の子について歌っている。間奏でのドラム・ソロも秀逸。辛辣な歌詞だが、楽天的な曲調のせいか、後味は悪くない。
12YOU'RE LOOKIN' FINE
デイヴ・デイヴィスのヴォーカルとリード・ギターをフィーチャーしたブルージィなロック・チューン。デイヴのソウルフルな歌声とギター・ソロが秀逸だが、香辛料の役割を果たしているピアノも好サポート。当時のライヴでは定番のレパートリーのひとつだった。
13SUNNY AFTERNOON
世界中で最も愛されているはずのキンクス・ナンバー。ミュージック・ホール調のもの悲しいサウンドをバックに、没落した貴族の悲劇的な生活が歌われる。全英1位、全米14位のヒットを記録。あの「およげたいやきくん」を思い出さずにはいられないバラード。
14I'LL REMEMBER
アルバム『フェイス・トゥ・フェイス』を最後まで聴いてくれたファンへの感謝の気持ちを込めた曲。前作『キンク・コントラヴァーシー』のアウト・テイクだったらしいミディアム・テンポのチャーミングなビート・ナンバー。「君の言葉を忘れない」という別れの挨拶も素敵。
15I'M NOT LIKE EVERYBODY ELSE
16DEAD END STREET
17BIG BLACK SMOKE
18MISTER PLEASANT
19THIS IS WHERE I BELONG
20MR.REPORTER
21LITTLE WOMEN