ガイドコメント
“ファンクの帝王”ジョージ・クリントンがプロデュースした、85年リリースの2ndアルバム。ファンク・ラップとパンクを融合し、より本格的にファンクを取り込もうとする、彼らの飽くなき音楽的探究がうかがえる。
収録曲
01ジャングル・マン
妙にお行儀の良かったデビュー作から一変、獣臭がぷんぷんと放たれている。ミーターズの曲とは同名異曲だが、じわじわ盛り上がる野太いファンク・リズムには彼らからの影響も感じられる。復帰したヒレルのギターが鋭利だ。
02ハリウッド
ミーターズが残した傑作ニュー・オーリンズ・ファンクを、P-ファンクのジョージ・クリントンのプロデュースでカヴァー。クリントンの仲立ちにより、三者のファンク観がぐにゅぐにゅと融合。ファンク新世紀の幕開けだ。
03アメリカン・ゴースト・ダンス
ネイティヴ・アメリカンの気高さと、彼らから見た白人たちの傲慢さをラップで語ったナンバー。ジョージ・クリントンから貸与された黒っぽさを、持ち前のクールなファンク・サウンドに重ねた曲調が全編にわたって剥き身のようで攻撃的。
04イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ
スライ&ザ・ファミリー・ストーンのポリリズミックな曲を、ジョージ・クリントンのプロデュースでカヴァー。タイトなリズム隊と自由奔放なギターが原曲の持つクールな魅力を引き出し、さらなるクールさを加味。
05ネヴァーマインド
同時代バンドを思いつくままにこき下ろしてみせる毒気たっぷりのナンバー。いかにも80年代的なサウンドを鳴らしながら、デュラン・デュラン、メン・アット・ワーク、ホール&オーツらを“うすら馬鹿”呼ばわりする悪態をついてみせる。
06フリーキー・スタイリー
サウンドの質感は古臭いものの、低音が意識されたバック・トラックとマントラのようなラップで醸し出される前衛的な雰囲気は、アブストラクト・ヒップホップの先駆けのようにも思えてくる。歌詞は女性蔑視な論調だ。
07ブラックアイド・ブロンド
シリアスなファンク・サウンド(ただし歌詞は軽薄)から立ち上る黒さと重さと明るさに、ファンカデリックの作風を意識したような気配が。フリーの凄まじく雄弁なベース・プレイが、もこもことした音処理の前ではやや魅力減か。
08ザ・ブラザース・カップ
09バトルシップ
アメリカと中東諸国との間で高まっていた緊張感を憂いたとされるポリティカルな歌詞を、跳ね回るパンク/ニューウェイヴ・サウンドに乗せ熱唱。しかし、この曲発表から数年経た91年に湾岸戦争は開戦。彼らの願いは届かなかったのか。
10ラヴィン・アンド・タッチン
わずか36秒の短い曲ながら、前戯からピロー・トークにいたるまでをささやくように凝縮歌唱。「お前と結婚する」と約束するくだりに、まるで説得力がないところが彼ららしい。この短さでもフリーのベース・プレイは個性的だ。
11カソリック・スクール・ガールズ・ルール
“カトリック系女学生=性的欲求が抑圧されている”と決めつけるアンソニーの、絵に描いたような官能小説的妄想が暴走する歌詞。テクニカルなギター・フレーズをフィーチャーしたメタル・ファンク・ナンバーだ。
12セックス・ラップ
小気味良いバンド・サウンドに合わせて、リズミカルなラップ風歌唱を展開するが、その歌声は不自然なまでにバック・トラックと乖離。アンソニー自慢の性技がこと細かに描写された歌詞は、良識者の間ではすさまじく不評だ。
13サーティ・ダーティ・バーズ
わずか13秒の長さしかなく、おまけに曲ですらない小話。訛りによる発音のおかしさをネタにしたジョークらしく、似たような韻の単語をボソボソと列挙。英語力のない耳にはポエトリー・リーディングに聴こえるが……。
14ヤートル・ザ・タートル
ホーンもヴォーカルもクールなファンク・ナンバー。うねうねと動きながら自己主張を繰り返すギターはことさら魅力的だ。歌詞は“親亀の背中に子亀を……”と、亀の山を築いてそこに登ろうとする亀の王様の歌。まったくもって奇妙だ。
15ネヴァーマインド (デモ)
16セックス・ラップ (デモ)
17フリーキー・スタイリー (オリジナル・ロング・ヴァージョン)
18ミリオネアーズ・アゲインスト・ハンガー