ガイドコメント
自らのルーツであるブルース・ロックへ回帰した94年作品。水を得たサカナのごとく、大ベテランながらみずみずしいギター・プレイを聴かせてくれる。紙ジャケット・シリーズ第7弾。初回限定。
収録曲
01BLUES BEFORE SUNRISE
リロイ・カーの戦前の名曲をオリジナルにほぼ忠実なアレンジでカヴァー。唸りをあげるスライド・ギターと荒々しいダミ声のヴォーカルが、ブルースの真髄に迫らんとするクラプトンの気迫を感じさせる。原曲の世界に引きずり込まれる強力なカヴァー・ヴァージョン。
02THIRD DEGREE
エディ・ボイドが遺したシカゴ・ブルースの名曲をスロー・ヴァージョンでカヴァー。これまでになくブルージィに迫るヴォーカルと火花が散りそうなほどハジケるギター・ソロが印象的。クリス・ステイントンのピアノとジェリー・ポートノイのマウスハープも好演。
03RECONSIDER BABY
エルヴィス・プレスリーも採り上げていたローウェル・フルソンの名曲をカヴァー。クラプトンのギターが唸りをあげるイントロから始まり、ブルースの伝統を踏襲しながら自身の心情を語るギター・ソロが秀逸。ヴォーカリストとしての成熟を感じさせる歌声も良い。
04HOOCHIE COOCHIE MAN
父のように慕っていたマディ・ウォーターズの名曲を力強く、そしてムーディなアレンジでカヴァー。クラプトンの雄々しいヴォーカルが素晴らしい。かつてマディのバンドでもプレイしていたジェリー・ポートノイのマウスハープがフィーチャーされている。
05FIVE LONG YEARS
ヤードバーズ時代にも採り上げていたエディ・ボイドの名曲をヘヴィなアレンジでカヴァー。唸りまくるリード・ギターが炸裂するイントロからその世界に引きずり込まれる名演。気迫のこもったヴォーカルも強力だが、魂を揺さぶるようなギター・ソロも凄まじい。
06I'M TORE DOWN
共演の経験もある年長の畏友フレディ・キングの代表曲をカヴァー。軽快なシャッフル・ビートに乗って、1976年に他界した師匠の衣鉢を継ぐかのような歌と演奏を聴かせる。ヴォーカルも快調だが、キングの魂が乗り移ったようなギター・ソロも素晴らしい。
07HOW LONG BLUES
リロイ・カーの戦前のブルース曲をアンプラグドなカントリー・ブルース・スタイルでカヴァー。クラプトンはアコギを弾きながら歌い、お気に入りのドブロ・ギターをオーヴァーダブしている。ドブロの音色が心地よく、ジェリー・ポートノイのマウスハープも好演。
08GOIN' AWAY BABY
ジミー・ロジャースが1950年のチェス録音盤に残した名曲をカヴァー。見事なシャッフルのトレイン・ビートに乗って、原曲のフィーリングを伝える味わい深いヴォーカルを聴かせる。ジェリー・ポートノイのマウスハープが全編にわたって泣き叫んでいる。
09BLUES LEAVE ME ALONE
ジミー・ロジャース、マディ・ウォーターズ、ウィリー・ディクスンらによる1954年のチェス録音版を下敷きにしたカヴァー。クラプトンがブルース・フィーリング満載のヴォーカルを聴かせる。ジェリー・ポートノイのマウスハープをフィーチャーしたヴァージョン。
10SINNER'S PRAYER
レイ・チャールズも歌っているローウェル・フルソンの名曲。ピアノとホーン・セクションをフィーチャーしたスロー・ブルース・スタイルで、クラプトンが気合いの入ったヴォーカルと歌心あふれるギター・ソロを披露する。ブルースの教科書に載せたいような演奏。
11MOTHERLESS CHILD
クラプトンにとっては宿命的な主題を持つトラディショナル・ソングのカヴァー。アコースティックなカントリー・ブルース調の演奏に乗って、クラプトンはエルヴィスばりのセクシーなヴォーカルを披露している。12弦ギターやマンドリンの響きも印象的。
12IT HURTS ME TOO
エルモア・ジェイムズの名曲をヘヴィなアレンジでカヴァー。ジェイムズの霊が乗り移ったかのように荒々しいダミ声で歌うクラプトンのヴォーカルが素晴らしい。イントロから唸りまくっているスライド・ギターでも彼はジェイムズばりの見事なソロを披露している。
13SOMEDAY AFTER A WHILE
敬愛する故フレディ・キングが遺した名曲をカヴァー。本家キングばりのソウルフルなヴォーカルも見事なものだが、天から降ってきたかのような閃きを随所に感じさせる饒舌なギター・ソロはまさに圧巻。天国のキングも大いに歓んでいるはずの名演だ。
14STANDIN' ROUND CRYING
父のように慕っていた“師匠”マディ・ウォーターズの名曲を、オリジナルにほぼ忠実なアレンジでカヴァー。この曲を歌うことを十二分に楽しんでいる“外弟子”クラプトンのヴォーカルと“内弟子”ジェリー・ポートノイのマウスハープとの絡みが気持ちいい。
15DRIFTIN'
70年代半ばのライヴでも採り上げていたチャールズ・ブラウンの古典的名曲をアコースティック・ギターの弾き語りでカヴァー。ブルースの神様に祝福されたかのようなヴォーカルと鮮やかなギター・ソロが堪能できる。彼のキャリアを改めて思い知らせる名演。
16GROANING THE BLUES
イントロのチョーキングから聴き手をのけぞらせるオーティス・ラッシュの名曲のカヴァー。ホーン・セクションを含むヘヴィなバンド・サウンドをバックに、悪魔にとり憑かれたかのように吠えるヴォーカルと史上最強の激烈なギター・ソロを披露する。名演中の名演。