ガイドコメント
ユーミンが荒井由実だった頃のオリジナル・アルバムとコンピレーション版をリマスタリングした作品。デビュー・アルバム『ひこうき雲』はディープな世界を表現し、音楽シーンに衝撃を与えた。
収録曲
01ひこうき雲
記念すべき1stアルバムの冒頭を飾るタイトル・ナンバー。若くして世を去った“あの子”をモチーフにした曲で、幸福感をもってその死を理解する鋭い感性が際立つ。音使いも個性的で、初期の名曲として人気が高い。
02曇り空
女性特有の気まぐれな感覚がよく表現された、ユーミンらしいライト・ポップス。曲中のフルート・ソロや洗練されたサウンド、サビ部分の松任谷正隆によるバック・コーラスなど、ボサ・ノヴァのようなオシャレ感が魅力。
03恋のスーパー・パラシューター
軽快なリズムのポップ・ロック・チューン。ゴスペルのように華やかなバッキング・コーラスや時代性を感じさせるユーミンらしいトレンディな歌詞、意外性に富んだアレンジなどが魅力。潔いエンディングも面白い。
04空と海の輝きに向けて
デビュー・シングル「返事はいらない」カップリング曲のアルバム・ヴァージョン。人生の岐路におけるポジティヴな心情を、夜明けの輝かしい海原に投影させる。クライマックスのサビでのカウンター的旋律が聴きどころ。
05きっと言える
2ndシングルとなったストレートなラブ・ソング。好きという気持ちをそのまま綴った単純明快な歌詞と巧みなコード進行が特徴的。2番以降のサビ・フレーズで披露するファルセットがかった歌声が、実にメルヘンチック。
06ベルベット・イースター
シンプルだが独特の味わいを持つ名ナンバー。曲調もユーミンの歌も雨の降る日曜の物憂気な雰囲気に満ちているが、歌詞では「いちばん好きな季節」と綴る。Aメロにわずかながら四畳半フォークの匂いがするのも特徴的。
07紙ヒコーキ
タイトル通り、紙ひこうきを飛ばしている時の心情を歌った2分半強のシンプルなナンバー。アルバム『ひこうき雲』収録曲の多くにも通じる、ユーミンの空や雲に対する執拗なまでのロマンティシズムがよく表われている。
08雨の街を
ライヴでは弾き語りで披露されることもある人気曲。ダルさや陰りがあるのに決してジメジメはしない、彼女特有の洗練されたサウンドが魅力。音圧に手を加えない当時の録音方法もあって、ヴォーカルの抑揚に臨場感がある。
09返事はいらない
記念すべきデビュー・シングル曲。アルバム収録ヴァージョンでは新たにアレンジが施され、バックのミュージシャンたちが比較的自由度の高い演奏をしている。ユーミンらしい洗練されたメロディとコード進行が魅力。
10そのまま
ふとした瞬間に恋人を想う、そんな日常の何気ないひとコマを切り取ったナンバー。一見つかみどころのない歌詞だが、そこに女性特有の移ろいがちな心情がよく表われている。郷愁感を誘うバンジョーやギターの音色が印象的。
11ひこうき雲
アルバムのオープニング曲のリプライズ。当時オーディション用に録音されたピアノの弾き語り音源から2番部分を、アルバム全体のアウトロとして収録。微妙に震える声など、前出テイクより感情がこもっていて感動的。