ガイドコメント
98年にリリースされ、大ヒットを記録した現時点での最新作が早くも紙ジャケットで登場。ファン泣かせのこのシリーズをしめくくる1枚。初回限定盤なので、お早めに。
収録曲
01MY FATHERS EYES
92年の“アンプラグド”セッションでも披露された曲。父親不在の幼年時代を過ごしたクラプトンが父親になって初めて自身の父親について想いを巡らせる。スライド・ギターをフィーチャーしたカリビアンなサウンドをバックに、彼の心情が伝わってくる名曲。
02RIVER OF TEARS
03PILGRIM
信号のようなギター・リフと90年代的なビートをバックに、クラプトンが囁くような声で静かに歌うバラード。津波のようなストリングスとエレキ・ギターが通り抜けた直後のコーラスが美しい。決して饒舌に語ることのないギター・ソロも、この曲にはふさわしい。
04BROKEN HEARTED
精神的な痛手と癒しを主題にした曲。レゲエをアレンジしたビートやティン・ホイッスルの音色が独特のムードを生んでいる。シンセサイザーも駆使されているが、それ以上にギター、ベース、ドラムスが重要なポイント。クラプトンのヴォーカルも素晴らしい。
05ONE CHANCE
アナログ盤のスクラッチ・ノイズから始まるパワフルなラブ・バラード。クラプトンの表情豊かなヴォーカルとセクシーな女声コーラスとの絡みも魅力的。サウンドを緩やかに支配するオルガンとストリングスをバックに、唸りを上げる饒舌なギター・ソロも秀逸。
06CIRCUS
92年の“アンプラグド”セッションでも披露されたコナー・ソングのひとつ。アコースティックなサウンドをバックに、クラプトンが淡々と歌うこのバラードのヒーリング効果は名曲「ティアーズ・イン・ヘヴン」にも匹敵する。人生に疲れたときに聴きたい曲。
07GOING DOWN SLOW
セントルイス・ジミーが40年代に書いたブルース曲を大胆な解釈で“改造”した90年代仕様のブルース曲。洗練のための洗練に陥ることなく、原曲の力を充分に活かしたモデル・チェンジが上手い。こういった試みはクラプトンにしかできないかもしれない。
08FALL LIKE RAIN
90年代のビートが普遍性を持ち得るかどうかはまだわからないが、クラプトン流カントリー・ブルースの98年型モデルといえるような、音楽的な試みに成功している。クラプトンはこういった実験を幾度も繰り返しながら自分らしい音楽を作ってきた。
09BORN IN TIME
ボブ・ディランが80年代末に書いた名曲をカヴァー。原曲の上品なメロディが下世話になる一歩手前で踏み止まった的確なアレンジが見事。自身のオリジナルであるかのように自然に歌っているクラプトンのヴォーカルも良い。ヒットしてもおかしくない曲。
10SICK AND TIRED
サイモン・クライミーとの共作によるオリジナル・ブルース曲。意地の悪そうなリード・ギターが唸りをあげ、イコライジングされたヴォーカルが辛辣な言葉を吐き出す。もはやカヴァーもオリジナルも変わらない境地へと足を踏み入れたクラプトンならではの世界。
11NEEDS HIS WOMAN
アコースティック・ギターの音色の美しさが印象的なラブ・バラード。クラプトンのジェントルなヴォーカルがトニー・リッチらのソフトなコーラスと絡み合い、新たな世界を構築している。より微妙なニュアンスを表現できるようになったヴォーカルとサウンドが斬新。
12SHE'S GONE
スティーヴ・ガッドのリム・ショットが心地よく響くビートに乗って、クラプトンが驚くほど饒舌に歌い、それ以上に饒舌にギターが歌いまくる“ロスト”ラブ・ソング。ギター・ソロのための曲かと思われるほど弾きまくっているが、これも彼の意欲的な実験のひとつ。
13YOU WERE THERE
意外なほど正統的にドラマティックなバラードだが、いわゆる“ロマンティック”なラブ・バラードではないところが新しい。流麗なオーケストラ・サウンドをバックに、嵐が過ぎ去った後の複雑な心情をじっくりと歌い上げている。終盤のギター・ソロが素晴らしい。
14INSIDE OF ME
クラプトンが自身の精神世界を見つめることから生まれたバラード。デジタル・ビート、女声コーラス、ストリングスをバックに、ファルセットを多用したR&B調のヴォーカルとギター・ソロを披露する。愛娘Ruth Kellyによる詩の朗読も効果的。不思議な後味のある曲。
15THEME FROM A MOVIE THAT NEVER HAPPENED
映画『That Never Happened』のテーマ曲。流麗なストリングスをバックに、クラプトンがアコースティック・ギターを奏でるインストゥルメンタル曲。映画のラスト・シーンにふさわしい美しいバラード。この曲が流れるなら映画を観てみたい、と思わせる。