収録曲
01World War3の報道ミス
第3次世界大戦が始まったという誤報が流れた日曜日、そのニュースを知らなかった男が過ごした一日を、世界のパニックぶりと対照的に描いた曲。冷ややかに英語でニュースを読む女性アナウンサーの声が印象的。キーボードをフィーチャーした浮遊感漂うクールなサウンドが、世界の狂騒を俯瞰しているかのようだ。
02Gipsy Dance
スペインなどの民族音楽を思わせる情熱的なリズムに、小気味良いサックスが絡む。力強く軽快なリズムから、主人公であるジプシーが踊るステップが浮かんでくるようだ。悲しげなメロディとその踊りのように“奇麗さ”と歌われる詞が切なく、サビでのコーラスがよりいっそう哀愁を誘っている。
03Rolling my Stone
レゲエを採り入れた、重い雰囲気が漂う曲。子供のころの自分を思い出しながら自問自答している歌詞と、殺伐としたサウンドが印象的。大人になっていく中で失くしたくないものを“石ころ”に喩えた“Rolling my stone”というコーラスが響き、“覚えているさ おまえを”というフレーズが心に残る。
04CRACKER JACKS
高杢禎彦が作詞を手掛け、ヴォーカルを取る曲。モータウン・サウンドを思わせるアレンジで、歯切れの良いビートと音の強弱をつけた流麗なサックスが特徴。そのサウンドに乗ってじわじわと盛り上がっていくメロディが、眠っていた力を呼び覚ましていくようだ。“CRACKER JACKS”というコーラスがキャッチー。
05島になった少年の唄
悲しげな旋律を辿るサックスの音色が特徴的なナンバー。“鳥になった少年”が君のことを忘れられず、空に羽ばたくこともせず、窓ガラス越しに君のことを見つめているという切ない歌詞が印象的。淋しく物静かなメロディから一転、力強く伸びやかなサビへと移り変わっていくが、全体を通して少年の悲しさが貫かれ、美しく響いている。
06Jim&Janeの伝説
漫画『ホットロード』からインスパイアされて書かれた曲。恋人Jimを亡くしたJaneに語りかけるように歌いながら、思い出のシーンがさり気なく描かれていく。それを振り切るかのように、風が吹き抜けていくような爽やかなサウンドに乗せて歌われる“Periodの向こうへ”というフレーズが印象的だ。
07愛と夢のFACIST
ヴォーカルは鶴久政治。ワルツ調の子供コーラスでメルヘンチックにはじまったかと思えば、妖しげなサックスとともにスカのビートが弾け、過激な歌詞が歌われる。欲望や不安、嫉妬心が限りなく広がり、“おまえのすべてが欲しい”と執拗に歌うも、最後に再び子供コーラスが入るなど、どこかトボけた雰囲気が感じられる。
08Good night
つま弾かれるギターに添って優しく歌われるバラード。恋人同士の静かな夜の1コマが目の前に浮かんでくるようだ。“二人なら 幸福さ”と甘い言葉をささやきながらも、“その先は 秘密だよ”とチャーミングな一面も見せている。恋人の涙を見て、夢の中まで追いかけるから“待っててね”と歌い、若者の可愛さや繊細さを感じさせる。
09ONE NIGHT GIGOLO
一夜の恋を歌った、魅惑的でダンサブルなナンバー。イントロ・間奏・アウトロで、艶やかなサックスと弾けるキーボードが聴ける。藤井郁弥の色っぽくてキザなヴォーカルと切れ味鋭いギターのカッティングが印象的で、男の身勝手さをダンディに演出している。クールな雰囲気の中にも孤独や寂しさが感じられる一曲。
10Standing on the Rainbow
チェッカーズ自身のことを歌った曲。83年のデビューから、それまでのさまざまな紆余曲折を思わせる内容で、7人を虹に喩え、“七つの 舌を出せ!!”というフレーズとともに、自分たちに対する誇りや仲間に対する熱い想いが伝わってくる。力強いドラムとベースに導かれるヴォーカルやサウンドは、大空に向かって羽ばたくような爽やかな印象だ。
11Blue Rain
歌に合いの手を入れるように響く哀愁を帯びたサックスが、“夜明けの雨音”に似合いそうな湿っぽいムードの曲。断片的で抽象的な歌詞からは、男女間のすれ違いややるせなさが伝わってくる。行き場のない想いを抱いたまま、雨音に包まれて夜を過ごす二人の姿が浮かんできそうだ。