収録曲
01PRETTY GREEN
メロディは従来の作風ながら、サウンドには明らかな変質が。有機的だった『セッティング・サンズ』までとは異なり、無機的性質が増している。太く重いベース・ラインに顕著なように、当時のニューウェイヴ・ムーヴメントからの影響が濃厚。
02MONDAY
これまでの作品でも何パターンか登場している、ミドル・テンポでおとなしめのラブ・ソング。ひかえめにダビーなリズム・トラック、ギターを主体にしていない構成など、のちのスタイル・カウンシルを思わせる作風だ。
03BUT I'M DIFFERENT NOW
デビュー時の作風を思わせるソリッドなビート・ナンバーだが、エキセントリックな趣のギターなど、サウンド全体のニューウェイヴ度数はかなり高い。ベース・ラインにも前作までとは質感を異にした太さが感じられる。
04SET THE HOUSE ABLAZE
ブロック・パーティー「ヘリコプター」への影響もあるのでは? と思わせる、性急なギター・リフがもたらすスピード感が持ち味の曲で、ところどころにダブ処理も施されている。目標を喪失した人々を描いた歌詞に表出した文学性にも着目したい。
05START
「トゥ・ビー・サムワン」で引用したとき以上にベースもギターも「タックスマン」! ホーンあり逆回転ありのビートルズ風の曲調だが、音にはニューウェイヴ・ファンクの要素も内包。音楽性も時代性も混沌とした曲だ。
06THAT'S ENTERTAINMENT
ジョージ・ハリスン「マイ・スウィート・ロード」風イントロの傑作アコースティック・ナンバー。「ゴーイング・アンダーグラウンド」の歌詞で体得した、抽象的表現を連ねて映像を喚起させる手法をここでも使っている。
07DREAM TIME
イントロはビートルズ『リヴォルヴァー』の影響による逆回転サウンド。以降の曲調が王道ジャム節なだけに、取って付けたような印象になったが、ポリリズミックなリズムやダブ・サウンドなど、新局面の提示もしっかりなされている。
08MAN IN THE CORNER SHOP
労働者の日常を描いた歌詞とロマンティックなメロディは、締切に追われるほど良い曲を書き上げるウェラーの奇妙な特性の賜物。ジョージ・ハリスンを思わせるフォーキーなギターが、美しい曲調に浮遊感を与えている。
09MUSIC FOR THE LAST COUPLE
XTCの諸作品やポップ・グループ『Y(最後の警告)』(1979年)など、前年までに登場した先鋭的作品に触発されたであろうホワイト・ファンク・ナンバー。未消化で“それ風”のダブ・サウンドが、むしろこの曲の味となっている。
10BOY ABOUT TOWN
ビートルズ、モータウン、ザ・フーなど、ウェラーの好物をまとめて煮込んだようなモッズ賛歌。抗いがたいリズミカルな要素を備えたポップ・ナンバーで、ディキシーランド風ホーンなどを加えたコンパクトな仕上がり。
11SCRAPE AWAY
催眠的なベース・ラインによる無機質なビート、エキセントリックなギター、残響を強めた音処理は、同時代のニューウェイヴ作品に呼応していた証。純正ジャム・ファンには賛否両論の実験性豊かな楽曲。