ガイドコメント
前作『ポスト』からの楽曲をメインに構成したリミックス・アルバム。ディリンジャやブロドスキー・カルテットなど、豪華リミキサー陣が参加して、芸術性の濃い高クオリティな作品に仕上げた。
収録曲
01POSSIBLY MAYBE
デジタルに変形されたビョークの声と実験的なミニマル・ビートがいびつに絡みあう、LFOによるリミックス。原曲を完全に超越した無機質な加工を施されても、深い情念を感じさせる歌唱は壮絶の一言に尽きる。
02HYPERBALLAD
アヴァンギャルドなストリングスを余すことなく体感できる、ブロスキー・カルテットのリミックス。クラシカルな弦楽器からまるでシンセや発振器のような音まで自由に操る演奏は、シンプルな印象を与えながらも凝った音作りになっている。
03ENJOY
印象的なビートが全体を支配している、OUTCASTによるリミックス。元曲にはないこのビートは既存の曲構造を壊し、新たな曲としての秩序を構築。この革新的なリミックスを受け容れるビョークの懐の広さと存在感の大きさを感じられる1曲となっている。
04MY SPINE
東南アジア風のエキゾティックな打楽器音を中心としたリミックス。多彩なアレンジが施されていても、特定のカルチャーや地域風俗に縛られない自由さとオリジナリティを失わないビョークのヴォーカルに感嘆する1曲。
05I MISS YOU (DOBIE RUB PART ONE)
U2の作品にも多く参加しているハウィー・Bとビョークとの共作によるヒップホップ・テイストのリミックス。ジャジィなトラックと美しいライミングが、ライトに聴ける完成度の高い一曲。
06ISOBEL
原曲の壮大な北欧音楽的世界観の完成度をさらに高めたリミックスは、ビョーク・リミックス中ではオーソドックスな部類といえるだろう。オーケストレーションからラテン・リズムへ移行する展開は、あたかも短いロード・ムービーを鑑賞している気分にさせてくれる。
07YOU'VE BEEN FLIRTING AGAIN
流動的でフィールド・レコーディングのような雰囲気の一曲。捉えどころのないサウンドの中を美しいストリングスが流れていくさまは、ビョーク自身の深層の源といえる北欧の奥深い自然を感じさせる。
08COVER ME
デイリンジャによる、エッジの効いたアップ・テンポなビートのリミックス。ビョークの曲には珍しいが、オリエントな原曲の雰囲気と意外にマッチしている。フロア・ユースに耐えうるアシッドな一曲。
09ARMY OF ME
もはやビョークのヴォーカルは崩壊し、グラハム・マッセイによる808stateのオリジナル曲のようなリミックスになっている。彼のお家芸とも言えるアシッド・ハウス、ハード・テクノが存分に活かされた名曲。
10HEADPHONES
地底かレコーディング・スタジオにでもいるような静謐な雰囲気の中を、『未知との遭遇』のような電子音がひたすら厳かに流れている一曲。そのささやかな音響はヘッドホンの向こうから聴こえてくる音漏れのようだ。