ミニ・レビュー
先頃出た4枚目でますますメディア露出度アップ、白縞ズの99年のファースト・アルバムが日本初発売。姉のドラム、弟の歌&ギター&キーボードだけで進行する、超ガレージなラフさがたまんない。ディランほか、カヴァーの選択もナイス。新譜より分かる。
ガイドコメント
現在のガレージ・ロック・ブームの火付け役ともいえるザ・ホワイト・ストライプス。待望の新作『エレファント』のリリースに合わせて、彼らが99年にリリースした1stアルバムが再発。
収録曲
01JIMMY THE EXPLODER
「爆発したいわけ?」と挑発を繰り返しながら爆裂するローファイ・ガレージ・ナンバー。ギターとドラムが刻むプリミティヴなビートに、歌詞そのままの“飛び跳ねるサル野郎”状態から抜け出せない聴き手が続出しそうだ。
02STOP BREAKING DOWN
不世出のブルースマン、ロバート・ジョンソンが残した世界音楽遺産のカヴァー。原曲もギター・ブギ調なのだが、ストライプスはザラッとした質感のスライド・ギターを使い、それをさらにガレージ・ブギへと発展させた。
03THE BIG THREE KILLED MY BABY
デトロイト出身の彼らによる自動車産業批判ソングで、曲題の“ビッグ・スリー”とはフォード、ゼネラル・モーターズ、クライスラーの“三大自動車メーカー”を指している。歌詞にもサウンドにも詰め寄るような迫力がある。
04SUZY LEE
『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』でも、作品を捧げる人物として名前が記されていた“スージー・リー”。その彼女に恋愛相談を持ちかける歌詞のヘヴィなブルース・ナンバーだが、最後は一方的な自問自答となり終幕。
05SUGAR NEVER TASTED SO GOOD
砂糖や水を「こんなにも美味しく思えたことはない」と称える、風代わりな歌詞のアコースティック・ブルース。さらっと弾き語っている印象の曲だが、“ギター・リフ発明家”ジャックならではのシブいリフがアコギで炸裂。
06WASTING MY TIME
もはや別れる以外に道がない恋人への想いが語られる、演劇型激情ブルース。歌詞の主人公が抱く悲痛な心情が憑依したかのようなジャックの歌声には、大げさといえそうなほど、真に迫る痛々しさが伴われている。
07CANNON
シンプルだけれども耳に残るギター・リフと爆撃ドラミングが乱舞する、ヘヴィ・ブルース。クレジットはされていないが、中盤部の歌詞は、彼らが敬愛するサン・ハウスも歌った「ジョン・ザ・レヴェレーター」からの引用だ。
08ASTRO
得意のハイ・ヴォルテージなプレイは控え、ジャッジャッジャッ……と、クールな様相で同じリフを繰り返すガレージ・ナンバー。歌詞も“××は宇宙旅行をするかも”と繰り返すだけだが、最後の最後にはオチが待つ。
09BROKEN BRICKS
1960年代ガレージ・パンクの有名無名曲のエッセンスを凝縮したような、クールではあるけれどもどこか落ち着きのない性急さがある魅力的なギター・リフ。地面に叩きつけるようなビートが、生き急いだ曲調にさらに拍車をかける。
10WHEN I HEAR MY NAME
ブルース・ロックも含むブルースの歴史を俯瞰するかのごとく、聴き覚えあるギター・フレーズの断片が次々と登場するガレージ・ブルース。曲がだんだんとスピードを増し、さらに加速と思わせたところで急減速。巧い。
11DO
自分を見失い思い悩む主人公の独白に、シンプルなギター・フレーズの繰り返しを重ね合わせた構成。堂々巡りに陥った状態を音で表現したスロー・ナンバーだ。“音楽はちょっとした工夫でこのうまさ”の好例に挙げたい一曲。
12SCREWDRIVER
強盗事件を目撃した実体験をもとに書かれた曲で、「見知らぬ誰かが近づいてきて……」と語る歌詞に、そのときの恐怖がリアルに塗り込められている。冒頭でのキレのある擬似バンド・サウンドは、さながらクリームのよう。
13ONE MORE CUP OF COFFEE
「コーヒーもう一杯」の邦題で知られるボブ・ディラン作の名曲をカヴァー。ヴァイオリンが哀切に醸し出す異国情緒が魅力の原曲だが、ストライプスはそのヴァイオリン役を鍵盤に担わせ、哀切さを再構築。なかなかの出来ばえだ。
14LITTLE PEOPLE
少ない素材で“シンプル・イズ・ベスト”な楽曲を作り上げる彼らだが、珍しくこの曲はシンプル過ぎのきらいがある消化不良な印象の曲。犬が甘えているようなSEも、効果を完全に発揮することなく素通り。
15SLICKER DRIPS
フリーキーなギター・リフと、どしゃ降りのようなドラミングが、もつれて転がってカオス状態を作り上げる、1分30秒のガレージ・ブルース・ナンバー。最後は三三七拍子と区別つかない展開へと突入し、ジ・エンド。
16ST.JAMES INFIRMARY BLUES
日本では「セント・ジェームス病院」のタイトルで知られるスタンダード・ナンバー。さまざまな解釈で歌い継がれてきたこの曲を、彼らはピアノとドラムで弾き語るスロー・ブルースとしてカヴァー。かげりある歌唱はさすがだ。
17I FOUGHT PIRANHAS
ノワール文学に通じるクールさが魅力のブルース・ナンバー。ソウルダッド・ブラザーズのジョニー・ウォーカーがギターで参加しており、そろりと進行する曲調の中盤では、レッド・ツェッペリン風ギターが数秒だけ炸裂。
18LET'S SHAKE HANDS
98年2月に限定500枚のアナログ盤のみで発表されたデビュー曲。「握手しよう」と歌いかける歌詞は、なるほどデビュー曲らしい内容!? 早くもガレージ・サウンドにブルースの旨味が取り込まれているのには驚かされる。
19LAFAYETTE BLUES
98年11月に限定500枚のアナログ盤のみで発表されたセカンド・シングル曲。デトロイトの地名らしき単語を立て続けに歌った、言葉遊びのような歌詞。ガレージ・パンクの魅力を詰め合わせたギター・リフが魅力的。