ミニ・レビュー
どういう訳かバンドの歴史に於ける谷間的解釈がなされている作品であるが、グルーヴィな呪術的世界に淋漓たるメロディの流れがおどろおどろしくも美しい彩りを与えるサウンドの様は初期の総決算的な趣すら読み取ることができる。
ガイドコメント
『パラノイド』とともにブラック・サバス初期の傑作といえる4thアルバム(72年発表)。彼らがプロデュースに関わっており、トータル感も高い作品。
収録曲
01WHEELS OF CONFUSION
うねるギターからスタートする8分超の大作。まるで精神世界を旅するかのようにゆったりと展開していき、ラスト3分を切ったところで幻想的かつスペイシーなパートへ移り、ギター・ソロ乱舞で幕を閉じる。
02TOMORROWS DREAM
ヘヴィなリフと図太いグルーヴがグイグイと楽曲を引っぱる、ブラック・サバスならではのハード・ロック・チューン。粘っこく歌い上げるオジー・オズボーンの呪文のようなヴォーカルは、意外にもキャッチーな印象を受けるから不思議だ。
03CHANGES
オジー・オズボーンが切々と歌い上げるピアノ・バラード。バックに配されているのが叙情味あふれるストリングスのみという、ブラック・サバスにしては異色なナンバーだが、のちにリメイクされる名曲の……これがオリジナル・ヴァージョンだ。
04FX
“エフェクツ”というタイトル通り、ギター・サウンドを加工処理して鳴らしただけの、効果音的なノイズ・トラック。約1分40秒間にわたり、レトロな浮遊感を伴うスペイシーな交信音が淡々と虚空に響く。
05SUPERNAUT
グルーヴィだがキャッチーなリフを持つノリの良いナンバー。ヘヴィなうねりがサイケデリックな感覚を誘発するも、歌メロは飽くまでおおらかな印象。中間部に挿入されたパーカッシヴなパートもいいアクセントになっている。
06SNOWBLIND
初期ブラック・サバスならではの特異なグルーヴを有するヘヴィ・ロック・ナンバー。引きずるようなギター・リフとタイトなリズムのミス・マッチ感が絶妙で、後半にはファンキーな展開も用意されている。
07CORNUCOPIA
初期ブラック・サバスが最も得意としていた、引きずるようなヘヴィ・リフとタイトなドラミングをうまくミックスさせたナンバー。決して重々しいだけではない、めまぐるしいリズム・チェンジの連続もスリリングだ。
08LAGUNA SUNRISE
アコースティック・ギターとストリングスだけで構成された間奏曲的なインストゥルメンタル・チューン。シンプルなフレーズの繰り返しのみで構成されているが、牧歌的なムードも感じさせる。フォーキーな叙情性を楽しみたい。
09ST.VITUS DANCE
どこか病的な躁状態を想起させるファンキーでヘヴィなナンバー。曲名の由来は“舞踏病”で、ならばこの異形のダンサブル指数も納得というもの。2分半足らずの小曲ながら、心の奥底にこびりつくようなインパクトがある。
10UNDER THE SUN
不気味なイントロを持ったヘヴィ・ロック・ナンバー。独特のグルーヴのメイン・リフから、人を喰ったようなブレイクやアップ・テンポのパートを挟みつつ、ラストまで重厚感を保ったままドラマティックに展開していく。