収録曲
01ASK THE ANGELS
ストーンズばりのギター・リフに先導されたロックンロール・チューン。前作『ホーセス』ではまだ半分は詩人だったパティの“ボーン・トゥ・ロックンロール”宣言。さらにこの世界への宣戦布告の歌でもあり、カリフォルニアの熱狂的なファンに捧げられている。
02AIN'T IT STRANGE
アメリカ的に意訳された擬似レゲエ・ビートに乗って、ドラッグや宗教に関わる夢想的なイメージが歌われるパティ・スミス流ゴスペル・ソング。神への祈りを思わせる詠唱や絶叫が耳に残る。行動を示唆する表現が目立つところはレゲエ的でもあるかもしれない。
03POPPIES
ジム・モリスン、イーディ・セジウィック、シヴァの女王に触発されて生まれた曲。ドアーズばりのジャム・バンド・サウンドをバックに、イーディの生涯を凝縮したような物語と12番目のラジオ局の魅力がドラッギーな表現で歌われる。パティの一人多重唱が秀逸。
04PISSING IN A RIVER
ピアノのイントロで幕を開ける劇的なバラード。「河の中の小便」というタイトルの熱烈なラブ・ソングだが、神への祈りの歌だと解釈することもできる。徐々に白熱するパティのエモーショナルなヴォーカルも圧巻だが、レニー・ケイの泣き喚くギター・ソロも秀逸。
05PUMPING
パティとレニー・ケイがパリのディスコで思いついたダンス・ステップを基にしたロックンロール・チューン。歌詞には特に意味はないようだが、海や神やバーのイスにまで声をかけているところがおかしい。連打されるピアノが特徴的だが、吠えるギター・ソロも秀逸。
06DISTANT FINGERS
ブルー・オイスター・カルトのアラン・レイニアとの共作曲。先駆的なニューウェイヴ・サウンドをバックに、UFOに乗った宇宙人への熱烈なラブ・ソングが歌われている。パティ自身によれば、地球人のボーイフレンドがいなかった子供時代の妄想の産物らしい。
07RADIO ETHIOPIA
詩人アルチュール・ランボーと彫刻家コンスタンティン・ブランクーシに捧げられた組曲の1曲目。エレクトリック・ギターが奏でるアヴァンギャルドなノイズの奔流をバックに、即興的な言葉の数々が放たれる。のちに“グランジの源泉”とも呼ばれた稀代の名演。
08ABYSSINIA
詩人アルチュール・ランボーと彫刻家コンスタンティン・ブランクーシに捧げられた組曲の2曲目。「アビシニア」はエチオピアの別名。燃え尽きる寸前のノイズの業火が最期の美しい煌めきを披露している。音が灰になる直前の余韻を楽しめる約2分間の終楽章。
09CHIKLETS
96年まで未発表だったアイヴァン・クラールとの共作曲。アコギのリフを基調にしたジャジィなサウンドをバックに「遠い過去からやって来た/チクレッツと呼ばれる男」についてパティが呟くように歌う。ボクシングの比喩が印象的。最後の笑い声もチャーミング。