ミニ・レビュー
どの曲もどの匂いもプンプンと桑田チックだ。「いわゆるサントラ」に留まらず、1曲1曲が色気をもつ。彼の、音楽と映画は他人じゃない、という思いがぎっしりだ。夏を思い返して、夏を愛しんで、勝手な思い入れを作りながら聴きたい1枚だ。
ガイドコメント
桑田佳祐による初監督映画『稲村ジェーン』のサウンドトラック。もちろん彼の映画であるからには単なるサントラでは終わらない! 映画とともに大ヒットした主題歌「真夏の果実」など、夏にぴったりの全13曲。
収録曲
01稲村ジェーン
全編スペイン語詞による、クオリティと純度の高いジプシー・ミュージック。流暢な桑田佳祐のヴォーカルと小倉博和の情熱的なスパニッシュ・ギターが聴きどころ。曲の前後に映画『稲村ジェーン』のワン・シーンのセリフが入っている。
02希望の轍
桑田佳祐の初監督映画『稲村ジェーン』のために書き下ろされた曲で、劇中でもオート三輪“ミゼット”を象徴する曲として印象的に使用されていた。イントロの“ヘイ!”のシャウトはコンサートでも定番になっている。
03忘れられたBIG WAVE
ビーチ・ボーイズを意識したという絶品のハーモニーが聴けるドゥ・ワップ曲で、エヴァーグリーンな輝きに満ちたナンバー。サビの「瞳を閉じて〜」の部分では、ついつい瞳を閉じて聴き入ってしまう。
04美しい砂のテーマ
桑田佳祐作曲ののどかなインスト曲。ハワイアンのようなゆったりとした雰囲気に満ちた小気味の良いアコースティック・ナンバー。シンプルだが洗練されたメロディをギターの温もりのあるサウンドがやさしく奏でる。
05LOVE POTION No.9
ザ・サーチャーズのカヴァー。ウクレレを前面に出したアコースティックなアレンジが特徴的。桑田の熱いヴォーカルや手拍子など、目の前で演奏しているかのような臨場感がある。大貫妙子がバック・コーラスに参加。
06真夏の果実
桑田佳祐がインスピレーションの源である自身の聖地“稲村ヶ崎”をありったけの愛で描いた映画『稲村ジェーン』の主題歌として90年の夏を彩った名曲。「四六時中も好きと言って〜」は邦楽史に残る名唱。
07マンボ
いかにもマンボらしいかけ声で始まるラテン・ナンバー。「稲村ジェーン」同様、全編スペイン語詞だが、本曲の桑田はテンションが高く、随所で情熱的な雄叫びを披露。歌詞は“マンボ、最高!”といった至極単純なもの。
08東京サリーちゃん
桑田が圧倒的な歌唱力を顕示するミディアム・テンポのブルース・ロック。注目すべきは彼が得意とする“英語に聴こえる日本語詞”で、極めて完成度が高い。ゲスト・ミュージシャンらによるソリッドな演奏も聴きどころ。
09マリエル
チャーミングなベースで始まる爽やかなラテン・ソング。ハイ・ノートをヒットするトランペットや清潔感のあるコーラスをバックに、桑田が伸びやかなヴォーカルを展開。南国の平和な雰囲気を満喫できる好ナンバー。
10愛は花のように (Ole!)
完全スペイン語詞による軽快なジプシー・ナンバー。情熱と哀愁の中に品を感じさせる桑田佳祐の洗練されたヴォーカルが実に魅力的。高い演奏能力に裏打ちされたスパニッシュ・ギターも聴きどころとなっている。
11愛して愛して愛しちゃったのよ
サントラ『稲村ジェーン』のラストを飾るナンバー。“和田弘とマヒナスターズ”のヒット曲のカヴァーで、メイン・ヴォーカルを務める原由子の澄んだ歌声とハワイアン・ギターが昭和の名曲に新たな息吹を吹き込んでいる。