ガイドコメント
いまや“ボス”の異名をとるスプリングスティーンを、一躍世界に知らしめた1975年発表の3rdアルバム。カヴァーされ続ける名曲「明日なき暴走」をはじめ、彼のロックンロール魂が結集された名作だ。
ミニ・レビュー
10年を経た現在でさえ伝わってくる圧倒的なこの迫力、ほとばしる情感。75年に発表された通算3枚目のこのアルバムでブルースは一躍ロック・スターにのしあがった。昔も今もブルースのマインドは熱く、エネルギッシュ。ロックの素晴らしさを味わえる名盤。
収録曲
01THUNDER ROAD
スプリングスティーンの新たな決意を感じさせるバラード。ピアノをフィーチャーしたドラマティックなサウンドをバックに「ここは負け犬だらけの町/俺は勝つためにここから出て行く」と宣言している。彼が3rdアルバム『明日なき暴走』に込めた想いを象徴する曲。
02TENTH AVENUE FREEZE-OUT
スティーヴ・ヴァン・ザント編曲のホーン・セクション(ブレッカー兄弟+デヴィッド・サンボーン!)をフィーチャー。メンフィス・ソウル調のサウンドに乗せて歌うのは、クラレンス・クレモンズがバンドに参加した時のエピソードも含む自伝的なストーリー。
03NIGHT
ビッグマンの豪快なサックスをフィーチャーしたロックンロール・チューン。真夜中のハイウェイを愛車で疾走することだけを生きがいにしている青年の歌。どこの町にもいるはずの若者の心情と夜の情景を描いたリアルな筆致はさすがスプリングスティーン。
04BACKSTREETS
ロイ・ビタンのピアノが先導するパワフルなバラード。恋人であると同時に親友でもあったテリーと語り手との友情と背信のストーリーがエモーショナルに歌われている。きっと誰もが経験したことのあるはずの青春の一時期のあの感覚を、見事に描き切った名曲。
05BORN TO RUN
「俺たちは走るために生まれてきた」という秀逸な歌詞の一節が多くの聴き手の心を捉えた、名曲中の名曲。フィル・スペクターばりのゴージャスなロックンロール・サウンドも魅力。「愛がリアルなのかどうかを知りたい」という一節も象徴的。全米23位のヒットを記録。
06SHE'S THE ONE
ボ・ディドリーのジャングル・ビートを借用した曲。「彼女こそが唯一の存在」と歌われる熱烈なラブ・ソング。クラレンス・クレモンズのサックス・ソロがフィーチャーされている。ライヴでは「モナ」「ノット・フェイド・アウェイ」などR&Rクラシックとのメドレーで披露される。
07MEETING ACROSS THE RIVER
ピアノ、ベース、トランペットだけをバックに歌われるジャジィなバラード。向こうの河岸でのデカい取引き($2,000)を今夜に控えたチンピラが相棒に語りかけている場面を、スプリングスティーンが歌う。良質の短篇小説のような小品。
08JUNGLELAND
夜の街をさまよう若者たちの物語を歌ったスプリングスティーン流ロック・オペラ。ピアノとヴァイオリンのイントロで幕を開け、パワフルなロックンロール・パートを駆け抜け、劇的なバラード・パートを経て、クライマックスへと到る。チャーリー・カレロのストリングスも秀逸。