ガイドコメント
サイモン&ガーファンクルの最新リマスター盤が通常仕様で再発。1966年発表の2作目で、大ヒットしたタイトル曲をはじめ、代表的な名曲を数多く含む秀作。「アンジー」のギター・プレイは必聴だ。
収録曲
01THE SOUND OF SILENCE
プロデューサーのトム・ウィルソンが『水曜の朝、午前3時』収録のオリジナル版にエレキ・ギター、ベース、ドラムスをダビングしたフォーク・ロック・ヴァージョン。S&Gには無断で行なわれたこのロック化が功を奏し、1966年1月1日に全米No.1ヒットを記録した。
02LEAVES THAT ARE GREEN
移りゆく時を歌ったフォーク・バラード。人生は“ハロー”と“グッバイ”の繰り返しに過ぎない、という内容の歌詞だが、ハープシコードの音色が明るく華やかなため、暗いムードになっていない。そういうものさとクールに言えるようになりたい、という歌かも。
03BLESSED
サイモンが英国滞在中に書いた曲。ハチロクの跳ねるようなリズムと酔っぱらいみたいな歌い方が楽しい異色のバラード。宗教と偽善がテーマ、なんて言ってしまったら面白味がなくなるので、ソーホーをうろつき、教会で雨宿りしていたら……という歌だと思ったほうがいい。
04KATHY'S SONG
サイモンが英国で出会ったガールフレンド、キャシーへの想いを綴ったラブ・バラード。瑞々しい歌声とリアルな恋の感触がここにはあり、一度でも恋愛を経験したことのある人なら誰もが感じられるはずの、あの気分と再会できる。初期のラブ・ソングの傑作。
05SOMEWHERE THEY CAN'T FIND ME
「水曜の朝、午前3時」の歌詞を書き換え、改めて仕立て直したロカビリー調の曲。ブルージィというよりもむしろジャジィなタッチのサウンドがいい。エレクトリック・ピアノとベースの好演が光り、トランペットも効果的。歌詞とサウンドの噛み合いも面白い。
06ANJI
サイモンにも大きな影響を与えた英国のギタリスト、デイヴィー・グレアムのインストゥルメンタル曲のカヴァー。当時、経済的に困窮していたグレアムを援助するために、サイモンが収録を希望したといわれている。世界中のアコギ少年がコピーを試みた名曲。
07RICHARD CORY
米国の詩人エドワード・アーリントン・ロビンソンが19世紀末に書いた同題の詩を下敷きにした、自殺の歌。サイモン流トーキング・ブルースのようなスタイルで、上流階級出身の金持ちで慈悲深い男の自殺を、貧しい労働者の視点から描いている。
08A MOST PECULIAR MAN
サイモンが新聞で読んだ自殺者の記事に触発されて書いた曲。同じアルバム『サウンド・オブ・サイレンス』収録の「リチャード・コリー」同様、自殺者についての歌。しかし曲調や視点は大きく異なり、こちらは感情を抑えて淡々と歌われる美しいフォーク・バラード。
09APRIL COME SHE WILL
ガーファンクルが歌う初期の名曲。恋人との関係の変化を月日の移ろいになぞらえて歌う、シンプルなラブ・バラード。平易な言葉で書かれた歌詞だから、表面的な意味なら子供でもわかるだろうが、その裏に隠された語り手の気持ちがわかるのは思春期以降であろう。
10WE'VE GOT A GROOVY THING GOIN'
「アンジー」を基にしたイントロとフックを持つロック・チューン。同居している恋人(妻)が荷物をまとめて出ていこうとしていることに、慌てふためく男の独白を描いた歌詞がおかしい。原題は「僕たちはうまくいっていたのに」だから、邦題は明らかに誤訳。
11I AM A ROCK
典型的なフォーク・ロック調のバラード。絶望的なまでの孤立感を歌った曲だが、キャッチーなメロディや賑やかなサウンドが語り手の孤独を逆に強調している。ディランの影響も感じさせるが、こんなふうに“翻案”できるのはサイモンならでは。全米3位のヒット曲。
12BLUES RUN THE GAME
1965年12月に録音された『サウンド・オブ・サイレンス』のアウト・テイク。サイモンの友人でもある英国のシンガー・ソングライター、ジャクソン・C.フランクの曲。アコギの弾き語りによるメランコリックなフォーク・バラードで、のちにエディ・リーダーがカヴァーしている。
13BARBRIALLEN
1970年7月に録音されたデモ・トラック。『明日に架ける橋』の次にリリースされるはずだったアルバムのための録音だと思われる。カントリー調のメロディが印象的なトラディショナル・フォーク・バラードは、ロミオとジュリエットばりの純愛物語を歌った伝承古謡。
14ROSE OF ABERDEEN
1970年7月に録音されたデモ・トラック。心から愛していた少女を失ってギャンブラーを名乗り、放浪する男を主人公にしたトラディショナル・フォーク・ソング。サイモンは淡々と歌っているが、ガーファンクルとのハーモニーでは熱を帯びる場面も。
15ROVING GAMBLER
1970年7月に録音されたデモ・トラック。S&Gはほぼ全編をふたりのハーモニーで歌っている。やけに懐かしいカントリー調のメロディが心地良い。90年代にはディランもこの曲を採り上げていたが、ひょっとしたらサイモンが彼に教えたのかもしれない。