ガイドコメント
サイモン&ガーファンクルの最新リマスター盤が通常仕様で再発。70年発表のラスト・アルバムで、全米チャートで10週間連続1位を獲得し、グラミー賞にも輝いた、音楽史上に残る不朽の名作だ。
収録曲
01BRIDGE OVER TROUBLED WATER
スワン・シルヴァートーンズに触発されてサイモンが書いた、S&G版ゴスペル・ソング。自己犠牲の精神を描いた歌詞も傑作だが、何よりもガーファンクルの黄金のテノールが素晴らしい。ラリー・ネクテルのピアノとストリングスも秀逸。6週連続で全米No.1ヒットを記録。
02EL CONDOR PASA (IF I CLOUD)
ペルーの伝承歌を基に1910年代に作られたフォルクローレに、サイモンが新たに英詞を付けたバラード。サイモンの友人でもあるロス・インカスの演奏がバッキング・トラックに使われている。日本では「明日に架ける橋」よりもヒットしたお馴染みのナンバー。
03CECILIA
ロサンゼルスの借家での遊戯的なセッションから生まれたカリプソ調の曲。さまざまなパーカッションや音程の狂った木琴が鳴り響く賑やかなサウンドに乗って、S&Gが実に楽しそうに歌っている。カリビアンなムードも心地良い。全米4位のヒットを記録。
04KEEP THE CUSTOMER SATISFIED
ツアーの日々に疲れたミュージシャンの愚痴を歌にした陽気な曲。前半はアコギとリズム・セクションによるシンプルなサウンドだが、中盤はR&B調のホーン・セクションがフィーチャーされ、終盤には狂騒的なまでにラウドなブラス・ロック仕様となる。
05SO LONG, FRANK LLOYD WRIGHT
本格的なボサ・ノヴァ調の美しいバラード。米国の偉大な建築家に「さよなら」を告げる歌だが、建築を学んでいたガーファンクルへのサイモンからの訣別の歌でもある。フルートをフィーチャーした演奏やサイモンのアコギのプレイも鮮やか。
06THE BOXER
「Lie-la-lie」のリフレインが印象的なサイモンの自伝的曲。アコギの響きを中心にさまざまな楽器を用い、エコーを効果的に使ったサウンドがユニーク。終盤のストリングスも圧巻。のちにサイモンはこの曲に新たなヴァースを加えた。全米7位のヒットを記録。
07BABY DRIVER
シングル「ボクサー」のB面収録曲。サイモンがひとりで作り上げた、古き良きロックンロール調の曲。荒々しいサックスのソロをフィーチャーし、1950年代風味のコーラスやSEを満載したサウンドが楽しい。サイモンの少年時代のエピソードを含む歌詞も興味深い。
08THE ONLY LIVING BOY IN NEW YORK
“トム”(ガーファンクル)に語りかける“ニューヨークの少年”(サイモン)の歌。映画『キャッチ22』の撮影のためにメキシコへ行ってしまったガーファンクルへの訣別のバラード。聖歌隊風のコーラスをバックに、サイモンが優しく、そして力強く歌っている。
09WHY DON'T YOU WRITE ME
スカのリズムを導入しようと試みた曲。結局スカにはならなかったものの、楽しいリズムになっている。恋人からの手紙を待つ主人公の心情には、ガーファンクルの不在によるサイモンの苛立ちも反映しているようだ。S&GのSだけの曲のひとつ。
10BYE BYE LOVE
1969年11月のライヴ録音。敬愛するエヴァリー・ブラザーズの1957年のヒット曲をカヴァーした本作は、観客の歓声や手拍子をフィーチャーしたヴァージョン。みずからの原点に戻ったS&Gの素直なハーモニーが聴ける。
11SONG FOR THE ASKING
サイモンが愛妻ペギーのために書いたラブ・ソングだが、ガーファンクルへの訣別の歌でもある。アコギとストリングスが美しい。映画の撮影でメキシコにいたはずの相棒の歌声が聴こえないのは寂しいが、最後のアルバム『明日に架ける橋』のラストにはふさわしい。
12FEUILLES-O
1969年8月に録音されたデモ・トラック。S&Gがフランス語で歌ったハイチ民謡。エスニック音楽に対する当時のサイモンの積極的な関心を改めて感じさせる。3年後、ガーファンクルは1stソロ・アルバム『天使の歌声』でもこの曲をカヴァーしている。
13BRIDGE OVER TROUBLED WATER
200を超えるカヴァー・ヴァージョンがあるといわれる、名曲中の名曲の貴重なデモ・トラック。ピアノをバックに歌うガーファンクルはリラックスしたヴォーカルを聴かせてくれる。ピアノのアレンジと新たに書き加えられた3番の歌詞も、完成ヴァージョンとは異なっている。