ガイドコメント
74年発表の3rdアルバム。「キラー・クイーン」「ナウ・アイム・ヒア」など、メンバーの多彩な持ち味が発揮されたバラエティ豊かなヒット盤。英国オリジナル・アナログ盤を忠実に再現。
収録曲
01BRIGHTON ROCK
遊園地のSEから始まるハード・ロッキンな曲。津軽三味線ばりの激烈なストロークを披露するブライアンのギター・ワークが圧巻。若い恋人たちのための愛の魔法についての歌かと思ったら、実は不倫の歌だった、という意外なオチも鮮やか。
02KILLER QUEEN
03TENEMENT FUNSTER
ロジャーが歌うブルージィなロック・チューン。ブライアンのエレクトリック・ギターが唸りを上げるヘヴィなロック・サウンドをバックに、粘り腰のヴォーカルを披露する。ギターや車を要求するハングリーな若者を描いた歌詞も彼らしい。
04FLICK OF THE WRIST
アラビックなメロディから始まるユニークな曲。多重人格者ばりに変化するフレディの歌声とコーラスとの絡みが楽しめる。頻繁にリズム・チェンジを繰り返すスリリングな展開と悪徳マネージャーについて書いたような歌詞も面白い。
05LILY OF THE VALLEY
「輝ける7つの海」の続編のような歌詞を持つバラード。フレディの愁いを帯びた歌声が美しい。繊細で緻密なコーラスとの絡みもあり、一瞬だが劇的に盛り上がるフックもある。わずか100秒あまりで終わってしまうのは惜しいと思わせる佳作。
06NOW I'M HERE
クイーンにしては珍しくストレートなロックンロール。ロックンロール・クラシックの数々が背後から聴こえてくるような演奏が楽しめる。サウンドの細部には彼ららしい仕掛けもあり、フェイド・アウト寸前にはチャック・ベリーの「リトル・クイニー」のフックが引用される。
07IN THE LAP OF THE GODS
アクロバティックなヴォーカル・ハーモニーをフィーチャーした曲。『ペット・サウンズ』の頃のビーチ・ボーイズを連想させるような瞬間もあり、その背後にはフィル・スペクターの影も垣間見られたりするところもクイーンの醍醐味のひとつ。
08STONE COLD CRAZY
ヘヴィメタルのクラシックだとも言えないこともないクイーン流ロックンロールの名曲。早口で饒舌なフレディのヴォーカルと“Stone cold crazy,you know”のコーラスが滅茶苦茶カッコいい。2分16秒で潔く切り上げてしまう手際も鮮やか。
09DEAR FRIENDS
英国古謡のようなメロディが美しいバラードの名曲。実はポール・マッカートニーが書いた曲、と言われたら10人中5人は騙されそうな気もする。ソングライターとしてのブライアンの才能も大したものだが、やはりフレディの歌声が素晴らしい。
10MISFIRE
ジョン・ディーコンの名が単独でクレジットされた初めての曲。愛嬌のあるポップ・ソングで、ヴォーカルとコーラスとリード・ギターとの絡みが巧い。コンパクトにまとまっているところは作者のジョンの性格を表わしている、とも言えないことはない。
11BRING BACK THAT LEROY BROWN
米国の伝説的悪役リロイ・ブラウンをモチーフにした曲。ウクレレを使ったボードヴィル調のコミカルなサウンドは愉快かつ痛快。こんな曲をセット・リストに加えても特に違和感はなく、ファンにも歓迎されてしまうところがクイーンらしい。
12SHE MAKES ME (STORMTROOPER IN STILETTOES)
ブライアン・メイ版“音の壁”が堪能できる曲。自己流のスペクター・サウンドの構築に集中したせいか、業師ブライアンにしては単調な曲。だが最後の荒い呼吸音も含めて、妙にエロチックな曲でもあり、あざといSEの挿入も効果的。
13IN THE LAP OF THE GODS...REVISTED
名盤『シアー・ハート・アタック』の最後を飾る「神々の業」再訪ヴァージョン。こちらはフレディのソロ・ヴォーカルをフィーチャーしたもの。終盤には男声合唱隊の勇ましいコーラスで大いに盛り上がるが、最期は神々の怒りの落雷で唐突にカット・アウト。