ガイドコメント
伝説は本作から始まった。記念すべきジャニスの初レコーディング作品。1960年代最高のロック・ヴォーカリストの存在感と表現力が、デビュー盤にしてすでに感じられる傑作。デジタル・リマスター盤。
収録曲
01BYE, BYE BABY
オースティン時代の旧友パウエル・セント・ジョンが書いた曲。ジャズやラテンの要素もあるアコースティックなサウンドをバックに、ジャニスがダブル・トラックで歌っている。ビッグ・ブラザーのスタイルではないけれど、ジャニスはジャニス。
02EASY RIDER
ジェイムズが書いたカントリー・ブルース調の曲。作者自身が寝ぼけたような声で歌っているので、ジャニスはコーラスのみだが、彼女が声を出した瞬間に彼の存在は完全に消え失せる。ジェイムズのヴォーカルと長すぎるベース・ソロがこの曲の弱点か。
03INTRUDER
性急なリズムとブルージィなサウンドに乗って「あんた、何をしようとしてるの?」とジャニスが歌う。ジャニスが書いたシンプルな曲だが、リズム・パターンやフックなどには工夫も見られる。彼女の歌声だけが唯一の聴くべきものであることには変わりはないが。
04LIGHT IS FASTER THAN SOUND
自分たちでディレイ・パートまで歌ってしまうユーモラスなコーラスをフィーチャーしたピーター・アルヴィンの曲。ジャニスはコーラスを歌っているが、この曲ではヴォーカル・パートのほとんどがコーラス・パート。ギター・ソロは健闘している、と言ってもいい。
05CALL ON ME
サム・アンドリューが書いたブルース調の曲。ジャニスのヴォーカルにサムがハーモニーを付けているが、とても息が合っている。ジャニスのシャウトはやはり圧倒的。どんな曲でも彼女が一度でもシャウトすれば、その一瞬だけで名曲になってしまう。
06WOMEN IS LOSERS
古いブルース「Whores is Funky」に触発されてジャニスが書いた曲。ジャニスが彼女らしい節まわしでパワフルに歌ってみせるシャッフルのブルース・チューン。「女は負け犬だけど男は弱虫」といった内容の歌詞も含めて、彼女らしい曲だと言えるだろう。
07BLINDMAN
古いゴスペル・ソングをメンバー全員でロカビリー調にアレンジした曲。ジャニスはコーラス担当。ビッグ・ブラザーには歌えるメンバーが3人もいたから仕方がないのだろうが、ジャニスのリード・ヴォーカルでも聴いてみたい。
08DOWN ON ME
古いゴスペル・ソングをジャニス風に改作した曲。ライヴでも定番曲として歌っていた初期の傑作。バンドの演奏はともかく、ジャニスのソウルフルなヴォーカルだけはすでに唯一無二。初期の歌声の瑞々しさも感じられるから、ファンにはうれしい1曲。
09CATERPILLAR
世界中の子供たちに自分の歌を聴かせるのが夢だったピーターが書いた曲。ビートルズ風の新型童謡、といったところか。楽しいアレンジだから、子供にもウケるかもしれない。当然のことながらピーターがリード・ヴォーカルだから、ジャニスはコーラスのみ。
10ALL IS LONELINESS
盲目のストリート・ミュージシャンとして知られるムーンドッグことルイス・ハーディンが書いた曲。ヴォーカル・ハーモニーをフィーチャーしたアレンジだが、リード・ヴォーカルはジャニス。ムーンドッグの独特の曲調を自分たちの世界に引き寄せて表現している。
11COO COO
ピーターが書いたシングル曲。ジャングル・ビートと哀愁のギターをバックに、ジャニスがソウルフルなヴォーカルを披露している。カッコーやダイアモンドのジャックが登場する歌詞も彼女にはよく似合う。
12THE LAST TIME
シングル「クー・クー」のB面に収録されたジャニスの曲。シャッフルというよりもむしろ4ビートに近いノリの曲だが、ジャニスは性急すぎるくらい突っ込み気味のノリでパワフルに歌っている。バンドの演奏は彼女の勢いについていくだけで精一杯、といったところか。
13CALL ON ME
サム・アンドリューが書いた曲の別テイク。サムのハーモニーが付いていないヴァージョンで、ジャニスがソロで歌っている。オリジナル版よりもブルース臭は薄く、彼女のシャウトもやや控えめだが、前者とは異なるジャニス流フェイクが楽しめる。
14BYE, BYE BABY
ジャニスの旧友パウエル・セント・ジョンが書いた曲の別テイク。オリジナル版以上に静と動の対比を強調するために、優しく歌う箇所はより優しく、声を張り上げる箇所はより張り上げて歌っているようだ。完成度でいえばオリジナルだが、ナマの魅力ではこちらのほうが……。