ガイドコメント
『チープ・スリル』に続き1969年に発表された、ジャニス初の本格的スタジオ録音作品。ブルース、R&Bにますます傾倒していく彼女がその並はずれた声のレンジとパワーをそそぎ込んだ名作だ。
収録曲
01TRY (JUST A LITTLE BIT HARDER)
お気に入りのソングライター、ジェリー・ラゴヴォイの曲。ジャニスには彼の曲がよく似合う。ホーン・セクションをフィーチャーした本格的なR&Bサウンドをバックに、ソウル全開のシャウトを披露するジャニス。シンガーとしての成長も感じられる名唱のひとつ。
02MAYBE
シャンテルズのヒット曲のカヴァー。ホーン・セクションをフィーチャーしたR&Bサウンドに乗って、ジャニスならではの絶妙のフェイクを披露するロッカ・バラード。どんな曲でも自分のオリジナル曲にしてしまうシンガーとしての彼女の独創性を堪能できる。
03ONE GOOD MAN
ジャニスのオリジナル・ブルース曲。ロック・コンボ編成でのサウンドが基調で、売り物のホーン・セクションは控えめ。ジャニスは「あたしはずっと一人のいい男を探し続けてる」と歌っている。地味なレパートリーだが、ロック寄りのジャニスがとても良い。
04AS GOOD AS YOU'RE BEEN TO THIS WORLD
親友ニック・グレイヴナイツが書いた曲。ホーン・セクションのソロをフィーチャーした長いイントロの後にジャニスが歌い始める。彼女が思いきりフェイクしまくることのできる広い空間がここにはある。ジャム・セッションのための曲と言えるかもしれない。
05TO LOVE SOMEBODY
ビー・ジーズのヒット曲をカヴァー。穏やかに始まる序盤からホーン・セクションと共に歌い上げる終盤のクライマックスまで、自由にフェイクし続けるジャニスの歌声に酔える1曲。ライヴの熱狂はここにはないが、だからこそ彼女の歌声をじっくりと楽しめる。
06KOZMIC BLUES
プロデューサーのゲイブリエル・メクラーとの共作曲。ジャニスの25年間の半生を凝縮したような名曲。彼女の身体の中で眠っていた桁外れのエナジーが一気に噴き出したかとも思われるような熱唱が聴ける。適度に抑制されたバンドの演奏も良い。
07LITTLE GIRL BLUE
ロジャース=ハートのスタンダード曲のカヴァー。ギターとストリングスをフィーチャーした抒情的なサウンドをバックに、ジャニスが自由にフェイクしながら歌い上げる。ロックやソウルのイメージが強い彼女のやさしい歌声が聴けるセンチメンタルなバラード。
08WORK ME, LORD
元エレクトリック・フラッグのニック・グレイヴナイツが書いた曲。じっくりと時間をかけて徐々にクライマックスへと到達するジャニス流ゴスペルの世界が堪能できる。簡単にピークまで行かないところに、シンガーとしての彼女の成熟が感じられる名唱のひとつ。
09DEAR LANDLORD
93年まで未発表だった『コズミック・ブルースを歌う』のアウト・テイク。ボブ・ディランの「拝啓地主様」をR&調のアレンジでカヴァー。ジャニスの饒舌なシャウトが楽しめる。ディランのほかの曲を歌うジャニスを想像させられる罪深い蔵出しカヴァー曲。
10SUMMERTIME
69年8月、ウッドストック・ミュージック&アート・フェアでのライヴ録音。最悪のコンディションだったと言われるウッドストックでのジャニスだが、最悪の状態でも最高の瞬間を作り出せるのが彼女の歌声。バンドの演奏もいまひとつだが、ジャニスはジャニス。
11PIECE OF MY HEART
69年8月、ウッドストック・ミュージック&アート・フェアでのライヴ録音。『チープ・スリル』から選曲された前年のヒット曲。当日の体調不良説を覆すような熱唱を披露している。終演後、当時のアルバム宣伝のためのラジオ・スポットが挿入されている。