ガイドコメント
前作から2年9ヵ月ぶりとなった、88年発表の4作目。話題となったシングル曲やプリンスとのデュエット曲などを含む力作だ。
収録曲
01ライク・ア・プレイヤー
同名のアルバムからのシングル・カット。離婚直後ということもあり、詞の内容も心の葛藤がうかがわれる内省的なものとなっている。ゴスペルを取り入れ、まるで救済を求めるかのようなヴォーカルを聴くことができる。
02エクスプレス・ユアセルフ
艶やかなホーンとシェイクするリズム・パートを軸とした、クール&ザ・ギャング風のダンス・クラシック調ナンバー。立ちはだかるものすべてをなぎ倒していく直視的なヴォーカルによって、魅力あるポップスへと昇華している。
03ラヴ・ソング
アルバム『ライク・ア・プレイヤー』での最大のトピックといえる、プリンスとのデュエット曲。プリンス風の緩いファンク・サウンド上で語り合う趣だが、当時の離婚後の心情とも取れる“あなたはあたしの時間をムダにしてるの?”という詞がリアル。
04デス・ドゥ・アス・パート
コミカルなテイストのイントロからライト・タッチのポップスへと展開するウエスト・コースト風ナンバー。“二人の運も尽きてしまった”と、ショーン・ペンとの敗れた結婚を歌うパーソナルな内容。終盤のガラスの割れるような効果音がリアルに響く。
05プロミス・トゥ・トライ
美しく映えるピアノとストリングスをバックに配したピュアなバラード・チューン。失った母親にすがりたい気持ちと嘆き続けることから離れなければ、という心の葛藤を、自分自身に言い聞かせるように歌うオマージュ曲。
06チェリッシュ
オールディーズ・テイストのスウィート・ポップスを、軽快なリズムのR&Bで表現したラブ・ソング。“思いを抱きしめて 歓びを抱きしめるのよ”というハッピーな詞がかえって、当時の満たされない愛で苦悩する彼女を投影しているようだ。
07ディア・ジェシー
「パパ・ドント・プリーチ」風のシンフォニック・オーケストラ・サウンドで幕開けるポップ・ナンバー。陽性的なメロディ・ラインが展開し、終盤でのアイリッシュ風ストリングスが幻想的で童話的な世界観をもたらせている。
08オー・ファーザー
物語的な「ディア・ジェシー」のアウトロから続く、清廉されたシンフォニックなオーケストラ・サウンドへの展開がこと瑞々しい。母親を亡くしてからいかに愛情を求めていたかを父親に打ち明ける、苦悩を携えた重厚なバラード。
09キープ・イット・トゥゲザー
スティーヴ・ブレイのプロデュースによる、洗練されたアーバンなダンス・トラック。だが、描かれた詞は、家族の絆を大切にしてと切実に訴えるシリアスな内容で、ありのままの自分で愛されたいという彼女の願望が込められている。
10スパニッシュ・アイズ
現実と希望、悲哀と享楽を彷徨う心の機微を、田園風景を想起させるゆったりとしたムードで包んだスパニッシュ・タッチのバラード。宗教的な詞をハスキーなファルセットで歌う姿には、ルーツへの憧憬さえみえる。
11アクト・オブ・コントリション
アルバム『ライク・ア・プレイヤー』のラストを飾るナンバー。ヘヴィなロック調ギター・リフとゴスペル・タッチのサウンドが絡む複雑な構築のなかで、カトリックの懺悔の言葉である「告解」を唱えていく。ラスト寸前での叫びが意味深。