ガイドコメント
サイモン&ガーファンクルの最新リマスター盤が通常仕様で再発。1968年発表の4作目で、彼らの最高傑作との呼び声も高い名盤。「アメリカ」「ミセス・ロビンソン」「冬の散歩道」ほか名曲揃いだ。
収録曲
01BOOKENDS THEME
アルバム『ブックエンド』前半(アナログ盤のA面)の組曲を括るテーマ曲は、サイモン十八番のアコギによるインストゥルメンタル曲。初めて聴いたときには一瞬に感じてしまうが、組曲をすべて聴き終えた後にもう一度聴けば、今度は深い感動が待っている。
02SAVE THE LIFE OF MY CHILD
ノイジーなエレクトリック・サウンドから始まる騒々しい曲。高いビルの上にいる少年を見つけて大騒ぎする人々の姿を歌っている。徐々に擬似イベント化していく騒動を皮肉っぽく描いた歌詞も見事なもの。SEを多用した賑やかなサウンドも面白い。
03AMERICA
ハミングから始まる名曲。1964年秋にサイモンが恋人キャシーと一緒に出掛けたアメリカ横断旅行から生まれた曲。映像を喚起する歌詞、空から舞い降りたかのような自然なメロディ、ハル・ブレインのドラミングが素晴らしい。そして、誰もがアメリカを探している。
04OVERS
映画『卒業』のために書いた曲だが、映画では使われなかった。マッチを擦って煙草に火をつけるSEから始まるバラード。ほぼ全編をサイモンが歌っているが、大切なパートでは、ガーファンクルの天使のような歌声が登場する。よく練られた歌詞も光る。
05VOICES OF OLD PEOPLE
ニューヨークとロサンゼルスの老人ホームでガーファンクルが録音した、老人たちの会話によるモンタージュ。追憶、諦観、達観……。さまざまな声がそれぞれの人生を語っている。音楽ではないが、組曲の中では重要なポイントとなる異色のトラック。
06OLD FRIENDS
ブックエンド組曲の中でも最も重要な曲。公園のベンチに“ブックエンド”のように座っているふたりの老人を見つめながら、自分たちが70歳になったときのことを想像する。SとGがヴォーカルをシェアしていて、不協和音を含む大胆なストリングスが素晴らしい。
07BOOKENDS THEME
ブックエンド組曲を締め括る最後のテーマ曲。「旧友」から続くストリングスの下からアコギのイントロが始まり、過ぎ去った日々についてS&Gが淡々と歌う。わずか80秒あまりの曲だが、さまざまなことを思い出させる曲であり、その余韻は恐ろしく深い。
08FAKIN' IT
自分をニセモノだと思っている男の歌。賑やかなフックを持つフォーク・ロック調のバラードだが、語り手の前世がSE(ゲストはビヴァリー・マーティン)付きで登場する一節が面白い。たしかにサイモンには仕立て屋がよく似合う。全米23位のヒットを記録。
09PUNKY'S DILEMMA
南カリフォルニアに憧れる男の夢想を皮肉っぽく描いた歌。口笛もフィーチャーされる能天気なタッチのバラードだが、徴兵忌避の男が登場するところが時代を象徴している。映画『卒業』のために書かれた曲だが、映画では使われなかった。
10MRS.ROBINSON
映画『卒業』のために書かれた名曲。サントラ盤収録の短縮版とは異なるヴァージョン。キャッチーなメロディと機知に富んだ歌詞が素晴らしい。イントロのアコギとベ-スとパーカッション、そしてスキャットも効いている。3週連続で全米No.1ヒットを記録。
11A HAZY SHADE OF WINTER
アップ・テンポの叩きつけるようなビートに乗って歌われるキャッチーなポップ・ソング。トランペットやオーボエの音色が効果的に使われている。勢いのある曲調の割に歌詞は暗いが、「希望を捨てるな」と歌うフックだけは勇ましい。全米13位のヒットを記録。
12AT THE ZOO
動物たちにたとえて人間社会を皮肉った、愉快なポップ・ソング。アコギを爪弾きながらのつぶやきから始まり、ピアノ・トリオをバックにした賑やかなフックへと展開していく。ドラッギーな匂いも漂うところは、いかにも1967年のヒット曲らしい。全米16位のヒットを記録。
13YOU DON'T KNOW WHERE YOUR INTEREST LIES
シングル「フェイキン・イット」のB面収録曲。擬似スカ調のビートによるフォーク・ロック・サウンドをバックに、自分が何を求めているのかを気づいていない女性への忠告が歌われる。サイモンにしては平凡な曲だが、中盤に挿入されるドリーミーなパートが美しい。
14OLD FRIENDS
サイモンによるアコギの弾き語りヴァージョン。ガーファンクルのハーモニーと中盤のソロが欠けていることがとても寂しく感じられる。この曲だけはS&Gの2人で歌ってもらわないと寂し過ぎる、と改めて思い知らされる名曲のデモ・トラック。