ミニ・レビュー
10年前のレコード会社移籍後の、初のベスト・アルバム。それはイコール、プロデューサーとしての山下達郎の存在が欠かせない彼女の世界ということになる。もちろんまりやが主役だが、達郎のセンスも見逃せず、素敵な夫婦合作作品のオン・パレードだ。
ガイドコメント
日本屈指のメロディメイカー、竹内まりやの、レコード会社移籍後の初ベスト・アルバム。山下達郎との夫婦合作による名曲が揃っており、彼女の歌い手としての素晴らしさをあらためて楽しめる。
収録曲
01けんかをやめて
河合奈保子に提供したミディアム・バラードのセルフ・カヴァー。恋に恋する女の子の思わせぶりな態度がかわいらしくも罪作り。8分の6拍子のリズムに乗せた、美しいピアノとストリングスがムードいっぱいに広がるナンバー。
02明日の私
03マージービートで唄わせて
60年代のバンド・スタイルによる懐かしのブリティッシュ・サウンドが印象的なナンバー。竹内に大きな影響を与えたビートルズへのオマージュ・ソングで、“マージービート”を彷彿とさせるギター・リフや間奏の電子オルガンが軽妙洒脱な一曲。
04Forever Friends
ホンダ「TODAY」のCMに書き下ろされた、ハートウォーミングなミッド。離れていてもいつでも心がつながっている女同志の友情について綴っている。陽だまりのような心地よいサウンドとハーモニカやハンド・クラップが温かい気持ちにさせてくれる。
05恋の嵐
TBS系ドラマ『となりの女』主題歌となった切ないミディアム・バラード。ドラマの内容に沿った歌詞で、“友達”のあなたとの道ならぬ恋に胸を焦がす女性の機微を丁寧に描いている。厚いコーラス・ワークが出色の一曲。
06シングル・アゲイン
ドラマ『火曜サスペンス劇場』の主題歌としてヒットした曲。浮気をされた女性の立場で歌う、低音域のヴォーカルが悲しみを誘う。未練を持ちながら、二度と同じ気持ちにはなれないことも知っている悲しみを、うまく描き出している。
07もう一度
山下達郎のコーラスと明るいピアノの音色が印象的なミディアム・ポップス。“あなたのそばにいれば 幸せだったのに”と、流れる月日の中で忘れかけていた気持ちを取り戻そうとする前向きな女性を描いている。TBS系ドラマ『くれない族の反乱』主題歌。
08マンハッタン・キス
映画『マンハッタン・キス』の主題歌として書き下ろされた、摩天楼の街が舞台にした恋を描いたバラード。夜明けとともに待つ人の元へと帰っていくあなたを想う女性の孤独な心を綴っている。サックスが洗練された雰囲気を醸し出している。
09元気を出して
失恋した女性を前向きにさせ、勇気づけるメッセージ・ソング。竹内まりやのヴォーカルはもちろんだが、ピアノ、パーカッションなどすべての楽器の音色に優しさがあふれている。山下達郎のアコギの音色も素晴らしい。
10本気でオンリーユー (Let's Get Married)
坂本龍一のシンセサイザー・パイプオルガンによる 「結婚行進曲」から始まるミディアム・バラード。甘美なストリングスとコーラスがロマンティックな全編英詞のウエディング・ソング。曲の合間に聴こえる山下達郎による犬の鳴き声にも注目。
11告白
結婚後、昔の恋人からの告白を受けた女性の心情を綴ったナンバー。「シングル・アゲイン」の系譜にある大人っぽいミッド・テンポの楽曲で、いつまでも昔の恋人を引きずってしまう、女性の悲しい性を上手く歌っている。
12純愛ラプソディ
好きな人に出会えたことで、平凡に見えていた自分自身や生活が変わっていく。そんな女心を、幸福感あふれるポップな楽曲に乗せた、竹内まりやの真骨頂といえる作品。その恋が浮気であるあたりは、なんとも個性的。
13リンダ
幸福感と慈愛に満ちた、優しい雰囲気のミディアム・ポップ・チューン。美しいメロディと“ヘイ、リンダ”の呼びかけが、ポールとポーラの「ヘイ・ポーラ」を彷彿とさせる。友達の結婚を祝福する歌詞もドリーミー。
14家 (うち)に帰ろう (マイ・スイート・ホーム)
TBS系ドラマ『木曜日の食卓』の主題歌として書き下ろされたナンバー。“冷蔵庫の中で 凍りかけた愛を 温めなおしたいのに”と歌う倦怠期を迎えた夫婦へのアドヴァイスのような詞を、明るいバンド・サウンドでまとめあげている。
15駅
竹内まりやの代表曲ともいえる、中森明菜に提供したバラードのセルフ・カヴァー。“あの人”を偶然見かけた女性の複雑な心情を描いた歌詞が繊細。竹内の曲では珍しいマイナー調のナンバーで、感傷を誘うストリングスにいっそう切なさが込み上げてくる。