収録曲
01MUSTAPHA
“イ〜ブラヒ〜ム”というフレディの雄叫びから始まる曲。クイーンならではの胡散臭い中近東ロックがうれしい。フレディの出自も利用した“エンタテインメント命”の彼らだからこその贅沢なフェイク。何を歌っているのか、よくわからない歌詞も最高。
02FAT BOTTOMED GIRLS
ア・カペラのゴスペル風クワイアから始まる、ストーンズを彷彿とさせるロックンロール。下品で低俗な歌詞を真正クイーン・サウンドでゴージャスに飾り立ててみせるところがいかにも彼ららしい。歌詞が“下品なストーンズ”なら、サウンドは“上品なストーンズ”か。
03JEALOUSY
“嫉妬”をモチーフにしたフレディのバラード。ピアノの弾き語りからリズム・セクションが加わり、分厚いコーラスもヴォーカルをサポート。ブライアンの愛器“レッド・スペシャル”による擬似ストリングスなど、サウンドの細部も凝っている。
04BICYCLE RACE
フランスに滞在中、宿泊したホテルの前でツール・ド・フランスが展開されたのを見て、インスパイアされたフレディが作曲。疾走感はもとより、曲中にベルを鳴らすなど、ちょっとした工夫もちりばめられている。
05IF YOU CAN'T BEAT THEM
ジョンの曲の中ではややロック寄りのポップ・ソング。キャッチーなギター・リフが先導する曲で、AOR系の米国製ロックをクイーンがやってみた、という印象もある。これで歌詞も甘口だったらシラケるかもしれないが、実際には辛口でシビア。
06LET ME ENTERTAIN YOU
フレディ主導の劇的なロックンロール。音楽的には大袈裟な表現で笑いを誘い、歌詞にもコミカルな表現を詰め込んでいるが、ここで彼らはこのバンドの基本的な姿勢を改めて明らかにしている。つまり、クイーンのエンタテインメント宣言。
07DEAD ON TIME
ブライアンの多彩なギター・ワークが堪能できる超アップ・テンポのロックンロール。早口言葉みたいな歌詞も楽しいが、早回しのような演奏も面白い。終盤にはさらに加速して……。エンディングまで聴き手を飽きさせない鮮やかな展開が魅力。
08IN ONLY SEVEN DAYS
極上のメロディが堪能できるバラード。フレディの美声にはジョンのキャッチーなメロディがよく似合う。ブライアンのギターによる流麗なストリングスが効果的に使われている。たった一週間で終わってしまう恋愛を描いた歌詞も楽しい。
09DREAMERS BALL
女性の立場から歌われるドリーミーなラブ・ソング。ギターとヴォーカルによって奏でられる擬似ホーン・セクションをフィーチャーしたジャジィなサウンドをバックに、フレディがひたすら甘く優しくセクシーに歌ってみせる。
10FUN IT
ロジャー流のファンク・ロック。流行のディスコ・ミュージックを意識したのか、あるいはニューウェイヴに触発されたのか、デジタル時代の到来を予告するようなドラム・サウンドが印象的。トレンドに敏感なロジャーらしい意欲作。
11LEAVING HOME AIN'T EASY
ブライアンが歌うバラード。ブライアンのヴォーカル、アコギやストリングスの使い方、サイケデリックなエフェクトなど、ジョージ・ハリスンを思わせる“マスト・パス”なサウンドが楽しめる。ジョージのファンも一度は聴いておいたほうがいいかも。
12DON'T STOP ME NOW
ピアノと歌だけのゆるやかなイントロから一転して、風を切って駆けるようなスピード感のあるバンド・サウンドが爽快。最後は再び緩やかにフェイド・アウト、と一瞬の夢心地を体験したようなドラマ性のある展開が秀逸。
13MORE OF THAT JAZZ
ロジャーが歌うニューウェイヴ仕様の曲。終盤には『ジャズ』収録曲のサウンド・コラージュがフラッシュバック感覚で挿入され、「そんな馬鹿騒ぎはもういいよ」というオチでエンディング。クイーンならではのユーモアのセンスを感じさせるギミックだ。