ガイドコメント
クラシック色を打ち出した前2作から一転、再びロックンロールを強調した1977年の6作目。フレディ・マーキュリーが雄々しく歌い上げる「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」の2大ヒットが生まれた。
収録曲
01ウィ・ウィル・ロック・ユー
02伝説のチャンピオン
03シアー・ハート・アタック
本来なら同題の3rdアルバムに収録されるはずだった曲。最初から最後まで全力疾走で駆け抜ける如何にもロジャーらしい強烈なロックンロール。たった一度のブレイクでも、ドラムスだけは演奏を止めず全力疾走のフィル・インを叩きまくる。
04オール・デッド
以前ならフレディが歌っていたであろうブライアンの曲。悲劇的な歌詞を持つこの美しいバラードを作者自身が歌っているのは、1977年のクイーンが過渡期にあったから。いずれにしても、ブライアンが歌うことでこの曲は奇妙なリアリティを得た。
05永遠の翼
ソングライターとしてのジョンの成熟を証明した曲。フレディが歌うこのバラードは良質のポップ・ソングであり、的確な編曲も含めて音楽的な完成度も高い。映画の一場面のような歌詞もいい。80年代のクイーンのポップ化を先取りしたような秀作。
06秘めたる炎
ギター、ベース、ヴォーカルをロジャーが担当する、ヘヴィなドラムスとメタリックなギター・リフが牽引するブルージィなロック・チューン。血気盛んな若者に忠告する歌詞は当時のパンク世代へのメッセージのようにも感じられる。
07ゲット・ダウン・メイク・ラヴ
フレディ流の変則的なブルース・ロック。ヘヴィなリフとコーラスを従えて、粘り腰のセクシーな歌声を聴かせる。SEが駆け巡る間奏部分は、フレディ版「胸いっぱいの愛を」か。業師フレディによるブルース解体新書、とも言えないことはない。
08うつろな人生
ブライアンが歌うミディアム・シャッフルのブルース曲。珍しくストレートなブルースだが、長いギター・ソロもなく、黒人トランペット奏者の栄光と没落の物語を描いた歌詞を淡々とクールに歌う。一度やってみたかったんだろうな、と思わせる曲。
09恋のゆくえ
ジョンが書いたカリプソ調のポップ・ソング。ポール・マッカートニーばりのメロディが秀逸。“Who need you?”という表現を巧く使った歌詞と編曲もナイス。この時期の4人の中で最もポップなソングライターはジョンだったのかもしれない。
10イッツ・レイト
シングルとしてもリリースされたブライアン主導の曲。レナード・スキナードばりのクイーン流サザン・ロック・サウンドが聴ける。最も英国的なバンドによる最も米国的なロック、という構図を本人たちも楽しみながらプレイしている、という印象がある。
11マイ・メランコリー・ブルース
フレディが歌うジャジィなゴスペル・ソング。ピアノ・トリオの伴奏で、コーラスも使わず、ソロでジャズっぽく歌ってみせ、あっさりとフェイド・アウト。単なる失恋の歌かと思わせておいて、自分のメランコリーさえも見世物にしてしまう歌詞が彼らしい。