ガイドコメント
初めてホームタウンのNYで録音された76年の4thアルバム。NYへの愛情、郷愁を感じさせる「ニューヨークの想い」「さよならハリウッド」などの名曲を含む、ビリー自身お気に入りの名盤。
収録曲
01さよならハリウッド
ビリーの自伝的な歌のひとつ。ビリー・ジョエル版スペクター・サウンドが楽しい。歌の主人公は、どちらかといえばポジティヴな気持ちで“goodbye to Hollywood”と歌っているようだ。「ロスアンジェルス紀行」のようなシニカルな視点は、ここにはない。
02夏、ハイランドフォールズにて
ハリウッドに別れを告げたビリーが、ハイランドフォールズで書いた曲。自分がどんな時代に生きているのかについて考えた歌詞は、ネガティヴでもポジティヴでもなく、ひたすら明晰。こんなポップ・ソングがあってもいいじゃないか、という発想の産物か。
03踊りたい
古き良き時代のロックンロールを偏愛する相手に「もうパーティは終わったんだよ」と告げる曲。擬似レゲエ調のリズムにマリアッチなスティール・ドラム。ビートルズ風のコーラスも登場する。音楽的イタズラが目立つ曲だが、これができるミュージシャンは信用できる。
04ニューヨークの想い
ビリーの自伝的な曲のひとつ。ジャジィなニュアンスもあるR&Bサウンドがニューヨーク的。ハリウッドも悪くはないが、僕はやはりニューヨークが好きなんだ、という歌詞にもリアリティがある。ヒット曲ではなかったけれど、のちに多くのカヴァーを生んだ名曲。
05ジェイムズ
ヴィブラフォンの音色が美しいバラード。幼馴染みのジェイムズに「自分の人生を気に入ってるかい?/生き方を変えてみないか?」と語りかける歌詞がいい。自伝的な要素も見え隠れしている。ミュージカル『ムーヴィン・アウト』でも使われていた。
06プレリュード/怒れる若者
得意の速弾きピアノをフィーチャーした長いイントロから始まる曲。性急なリズムに乗って“怒れる若者”への共感と皮肉が歌われる。ミュージカル・ナンバーのようなタイトルだが、のちにブロードウェイ・ミュージカル『ムーヴィン・アウト』で実際に使われた。
07楽しかった日々
贅沢な暮らしに別れを告げるバラード。未練はあるが、生活を変えなければ…… という歌詞にはリアリティがある。“贅沢な暮らし”を象徴しているような、ストリングスやホーン・セクションを駆使したゴージャスなサウンドも、この曲に似合っている。
08マイアミ2017
ニューヨークが壊滅してしまう近未来を描いた歌。語り手は2017年のマイアミにいるようだ。大雑把に言えば『日本沈没』のニューヨーク版。失われた街への郷愁の念が伝ってくるメロディとサウンドは、『ニューヨーク物語』のクロージング・テーマにはふさわしい。