ミニ・レビュー
タイトルからの予想をはずれて、ごった煮のヤミナベのようだ。「テケテケテケ」のグループ・サウンズあり、旅姿六人衆や胡弓が出てきたり、ヒロタ・ミコ・アイ・ラブ・ユーが飛び出して……。でも、だからサザンなんだな。
ガイドコメント
テケテケのグループサウンズあり、中国の伝統楽器・胡弓を取り入れた楽曲あり、デジタルなビート・サウンドあり。サザンの幅広い音楽性が“これでもか!”と詰まっていながら、どこか物悲しい異色作。
収録曲
01マチルダBABY
6thアルバム『綺麗』のオープニング曲。シンセや電子ドラムなどを取り入れた80年代らしいポップ・サウンドが特徴的。イントロの効果音やストーリー性のある歌詞など、それまでにはなかったカラーを出し始めた。
02赤い炎の女
軽快なラテン・ロック・ナンバー。桑田らしいエロティックな歌詞と熱いサウンドが絶妙に絡んで、いかにも危険な香りを漂わせる。ラテンでひときわ輝きを増すパーカッションと情熱的なアコースティック・ギターが印象に強い。
03かしの樹の下で
桑田と原の2人がヴォーカルを取る中国風ナンバー。電子ドラムをフィーチャーした空間的なサウンドが特徴的。“胡弓”が使用されている点と離別した親子について綴られた歌詞から残留孤児がテーマと考えられる。
04星降る夜のHARLOT
哀愁漂うレゲエ調ナンバー。心に傷を負いながら夜の街を生きる売春婦(=HARLOT)をテーマにしたフィクショナルな歌。桑田の感情豊かなヴォーカルと切ないメロディが、荒れ果てた女の気持を巧みに表現している。
05ALLSTARS'JUNGO
電子ドラムによる民俗音楽風フレーズを前面に打ち出した斬新なナンバー。黒人並みのファンキーな歌いまわしやベースとのユニゾンなど、桑田が自由奔放なヴォーカルを披露。シングル「EMANON」のカップリング曲。
06そんなヒロシに騙されて
70年代に活躍したアイドル、高田みづえによるカヴァーも有名なナンバー。サザンの初期らしいグループ・サウンズ風なアレンジが懐かしい。ライヴでも定番となっている息の長い人気曲。
07NEVER FALL IN LOVE AGAIN
トーン・ダウンした桑田佳祐のヴォーカルが味わい深いライトなバラード曲。シンプルなリズム・マシンと温もりのあるフリューゲル・ホルンが柔らかい雰囲気を演出。感情移入しやすいストレートな歌詞も味わいどころ。
08YELLOW NEW YORKER
サックスのブローで始まるブルース基調の軽快なロックンロール。ニューヨークに住む黄色人種を応援する歌で、勢いに任せたような語呂の良い単語が並ぶ中、“輪の中の個人”など、本質を突いた言葉も出て来る。
09MICO
60年代に活躍したシンガー、弘田三枝子のことを歌ったナンバー。ユーモアと愛情に満ちた歌詞や日本人好みの昭和歌謡的メロディは桑田ならでは。歌詞に登場する「人形の家」は彼女のヒット・ソング。
10サラ・ジェーン
爽やかなピアノのイントロで始まるミディアム・バラード。多感な少女の気持ちを歌ったナンバーで、映画『悲しみは空の彼方に』(1959)の登場人物からヒントを得ているともいわれる。伸びやかなソロを展開する八木のぶおのハーモニカが印象的。
11南たいへいよ音頭
ベースの関口和之が作詞作曲しヴォーカルをとるトロピカルなナンバー。タイトルには“音頭”とあるがサウンドはラテン調。いい意味で人間臭さのないヴォーカルとほのぼのとした曲調は、桑田にはない魅力といえる。
12ALLSTARS'JUNGO (インストゥルメンタル)
アルバム『綺麗』の5曲目に収録されているナンバーのインスト・ヴァージョン。フェード・インで始まり、原曲の1コーラス分にあたる約40秒で終わる。アルバム全体のバランスを考えた上でのインタールード的な作品と言える。
13EMANON
アルバム『綺麗』と同時リリースされた18枚目のシングル曲。フュージョンのようなシャレたサウンドとアダルトな恋愛観で綴られた歌詞が特徴的。激しく上下するAメロの旋律からは、桑田の高い歌唱力がうかがい知れる。
14旅姿六人衆
ライヴでは必ず最後に演奏される曲で、桑田佳祐が声を枯らしてシャウトしまくる感動のディープ・ソウル系バラード。サザンに関わるすべての人に捧げるメッセージ・ソングで、歌詞にはスタッフの名前も登場する。