ガイドコメント
『ハチミツ』同様高い人気と評価を決定づけた96年10月リリースの7枚目。力強い歌詞、バンド・サウンドが一体となったトータル感あるロック・アルバムに。「チェリー」などを収録。
収録曲
01花泥棒
目の前を一目散、7th『インディゴ地平線』の慌しいプロローグ。“この花を渡せたら、それが人生だ!”そんな花泥棒君のささやかで刹那的な生き様を、囃し歌のごとくのメロディと、ロックの強力なドライヴ感で描く斬新な作品。
02初恋クレイジー
弱気な“僕”の独りきりの世界が、大きく開けて行く……、そんな初恋への、戸惑いを含んだ歓びを歌い上げた、キュートでポップなラブ・ソング。あどけないピアノ・アレンジが、純真で青臭い少年像を見事に演出している。
03インディゴ地平線
7thアルバムのタイトル・チューンに相応しく、まさに“インディゴ”な色彩と“地平線”のスケールが際立つ、秀逸のロッカ・バラード。“希望のクズ”の僕らを、かくも美しい舞台に描き出すのは、弱きを愛しむ草野マサムネこそ。
04渚
優しく響く草野マサムネの声と、幻想のなかを泳いでいるかのようなフワリとしたサウンドが、頭のなかにゆったりと流れてゆく澄んだ水のイメージを描かせる。曲全体が儚くも強いオーラを放ち、音の響きにいつまでも浸っていたくなるような気分を運ぶ。
05ハヤテ
それは不意に心を奪い去る小悪魔な風か、はたまたハートを打ち抜いていく大胆な戦闘機か。“キュートなハヤテ”に心奪われた僕が、その膨らんで行く想いをスイートなメロディに乗せて描き出す、なんともかわいいラブ・ソング。
06ナナへの気持ち
茶髪にピアスのコギャル娘がヒロインという、異色の設定のラブ・ソング。振り回されながらも、彼女への想いをスウィートに歌い上げる弱気な“僕”が微笑ましい。イントロの、コギャル像とは程遠い可憐な声は、田村明浩の奥さんだ。
07虹を越えて
“モノクロすすけた工場”から“虹を越えて”“色になっていく”という、二人が自由を得ていく様を、色彩の変化で描き出した芸術的秀作。淡く繊細な色彩が広がっていく様は、あたかも水彩画の完成過程を追うようである。
08バニーガール
バンド・サウンドを前面に出した、爽快かつポップなロック・チューン。現実に馴染めない二人が、恋なる夢に落ちていく様を描いた、刹那的な喜びに溢れたナンバーだ。二人を受け止めるのが“ゴミ袋”、というオチが草野マサムネならでは。
09ほうき星
彗星の妖しい光が夜空を白んでいくような、そんな風景を思わせる眩惑のロック・ナンバー。田村明浩が機材をいじくって出来上がった偶然の産物とも言われるが、サビのしっとりした絶妙のグルーヴ感は、ベーシストのセンスあってこそ。
10マフラーマン
ギター・リフありきでできたというだけに、うねるような強烈なグルーヴを放つハード・ロック・ナンバー。愛を求めて走り続ける孤独なヒーローの、ロックな生き様を描くストーリーで、決して仮面ライダーのお話ではない。
11夕陽が笑う、君も笑う
“夕陽が笑う、君も笑うから、明日を見る!”と、見事なシアワセ三段論法を歌い上げる、アッパーなロック・チューン。ありのままでいいんだよ、という屈託のないストレートなメッセージが“疲れて不機嫌”な君にこそ響くはず。
12チェリー
草野マサムネが描く世界観は角のない柔らかさがあり、とても優しい。メロディの響きにはどこか寂しげな雰囲気が漂う。温かさのなかに感じるチクリとした痛みに、じわじわと切なさがにじみ出てくるのは、彼らの持つ魅力のひとつだろう。