ミニ・レビュー
(1)(6)といったNo.1ヒットを生み出した彼の全盛期を象徴する傑作。重心の低いファンク・サウンドと、甘くメロウな曲が同居するが、この時代の彼のあふれ出る才能ゆえに、全体は完璧にスティーヴィー色に統一されている。今回は2000年マスター使用の紙ジャケでどうぞ。
ガイドコメント
「迷信」と「サンシャイン」(この曲で73年度グラミー賞最優秀ポップ男性歌手賞を受賞)が全米No.1に輝いた72年の大ヒット・アルバムが紙ジャケ化。より深化したR&Bが聴ける。
収録曲
01YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE
アルバムからの2曲目のシングル曲。エレクトリック・ピアノとパーカッションをフィーチャーしたラテン調のサウンドをバックに歌われるメロウなタッチのラブ・バラード。リリースの数年後には早くもスタンダード化していた珠玉の名曲。1973年3月に全米No.1ヒットを記録。
02MAYBE YOUR BABY
70年代にはスティーヴィーの代名詞でもあった楽器、クラヴィネットをフィーチャーしたヘヴィなファンク・チューン。ヴォーカルとコーラスとの絡みが絶妙。レイ・パーカーJr.のギターも光る。洗練と泥臭さが反発せずに共存できる世界はスティーヴィーならでは。
03YOU AND I
印象的なメロディのラブ・バラード。リリースと同時にスタンダードになりそうなタイプの曲だが、オーソドックスなピアノに絡むシンセサイザーのフレキシブルな使い方がいかにもスティーヴィーらしい。豊かな音楽的素養と斬新な発想とのコラボレーションによる秀作。
04TUESDAY HEARTBREAK
ワウ・ギターとクラヴィネットを効果的に使ったミディアム・テンポのファンキーなポップ・ソング。スティーヴィーのマイペースなヴォーカルが秀逸。デニース・ウィリアムスらの女声コーラスも好サポート。デヴィッド・サンボーンのサックス・ソロも楽しめる。
05YOU'VE GOT IT BAD GIRL
シングル「迷信」のB面収録曲。ラテン調のリズムとジャジィなタッチが心地良いポップ・ソング。エレクトリック・ピアノやシンセサイザーの使い方も見事だが、ヴォーカルとコーラスとの絡みが特に楽しい。ダニエル・ベン・ゼブロンのパーカッションも好サポート。
06SUPERSTITION
歴史的名盤『トーキング・ブック』に収録されたナンバーで、シングルは全世界でNo.1ヒットを記録した場外ホームラン級の大ヒット曲。アルバムにも参加したジェフ・ベックのために書かれた曲で、とにかくファンキー。
07BIG BROTHER
十八番のハーモニカをフィーチャーしたアンプラグドなタッチのポップ・ソング。牧歌的な雰囲気のサウンドだが、実は辛辣なメッセージを含むプロテスト・ソング。しかし、音楽的にはピースフルで、スティーヴィの歌声も穏やかに響いている。
08BLAME IT ON THE SUN
ピアノをフィーチャーしたアンプラグドなサウンドとコーラスを従えた、スティーヴィーらしい豊かな情感をたたえたバラード。失われた愛について、さまざまな言い訳を並べながら、最終的にはすべては自分のせいだと認める歌詞も彼らしい。
09LOOKIN' FOR ANOTHER PURE LOVE
後年のAORを先取りしたかのような、メロウなフュージョン・サウンドが楽しめるバラード。ジェフ・ベックとバジー・フェイトンによるツイン・リード・ギターがフィーチャーされている。洗練されたサウンドに彩られた濃厚な音楽性をじっくりと堪能できる贅沢な1曲。
10I BELIEVE (WHEN I FALL IN LOVE IT WILL BE FOREVER)
美しく簡潔だが的確で力強いサウンドをバックに、真実の愛について歌ったバラード。余計な力を入れず、シリアスになり過ぎることもない姿勢がいかにもスティーヴィーらしい。リラックスした雰囲気の中での自然体の歌声が心地良く響く。最良の中庸がここにはある。