ミニ・レビュー
LPのアートワークをCD用に再現したペーパースリーブ・コレクションの1枚。80年9月発表の同作はレゲエの名曲(6)を含み、アルバム・チャートで3位に入ったヒット作。ジャケットのラスタ・カラーや“キング牧師の誕生日を祝日に”という(10)に第三世界への意識の強さを感じる作品。
ガイドコメント
シングル「マスター・ブラスター」や彼の代表的名バラード「レイトリー」を収録した80年作品の紙ジャケ盤。より深い歌声と、年齢性別人種を問わず響く普遍のメロディが素晴らしい1枚だ。
収録曲
01DID I HEAR YOU SAY YOU LOVE ME
ホーン・セクションをフィーチャーしたハードなファンク・サウンドに乗って歌われるラブ・ソング。強靭なリズム・セクションが先導する攻撃的なサウンドにふさわしく、スティーヴィーのヴォーカルもアグレッシヴ。女声コーラスとパーカッションも好サポート。
02ALL I DO
コーラスとの掛け合いも楽しめる熱烈なラブ・バラード。エレクトリック・ピアノやサックスをフィーチャーしたムーディなサウンドをバックに、スティーヴィーがソウルフルなヴォーカルを披露している。その後のライヴでのレパートリーとしてもおなじみの曲。
03ROCKET LOVE
恋愛をロケットにたとえた失恋ソング。ストリングスやコーラスをフィーチャーしたメロウなサウンドをバックに、シェイクスピア、ピカソ、バッハ、ブラームスらの名前を引き合いに出して歌われる。スティーヴィーの歌唱力を改めて思い知らされるパワフルなバラード。
04I AIN'T GONNA STAND FOR IT
キャッチーなフックを持つファンキーなポップ・ソング。スティーヴィー自身を思わせる非暴力主義者の語り手が本気で怒る歌詞が興味深い。後半の盛り上がりも強力だが、前半の穏やかな歌声が怒りの大きさを想像させる。ネイザン・ワッツのベース・ソロも秀逸。
05AS IF YOU READ MY MIND
「俺の心が読める女」について歌ったラブ・ソング。軽やかなラテン・ファンク調のサウンドに乗って、自由奔放に歌われるスティーヴィーならではのメロディが素晴らしい。間奏の饒舌なハーモニカ・ソロも秀逸。小品だが、抗い難いほど魅力的な曲のひとつ。
06MASTER BLASTER (JAMMIN')
心の友ボブ・マーリィを意識したスティーヴィー流レゲエ・ソング。レゲエのリズムに乗って熱っぽく歌われる歌詞にはマーリィの名前も登場し、ジャム・セッションの楽しさを伝え、さらに第三世界への目配りもあるところが彼らしい。全米5位のヒットを記録。
07DO LIKE YOU
若きダンスの達人ケイタを称えるストンプ・ソング。タイトなファンク・ビートに乗って歌うスティーヴィーのソウルフルなヴォーカルが魅力的。ダンスのための曲でもあるが、安直なディスコ・サウンドではなく、ホーンやコーラスのアレンジなども凝っている。
08CASH IN YOUR FACE
人種差別問題を主題にした曲。黒人だというだけでアパートを貸してもらえない、というエピソードを驚くほどストレートに歌っている。どちらかといえば地味な曲だが、こういったテーマをポップ・ソングに仕上げてしまうところがいかにもスティーヴィーらしい。
09LATELY
恋人との別れの予感を歌った珠玉のラブ・バラード。スティーヴィーが自身のピアノだけをバックにしっとりと歌い上げる。恋愛中の心理を描いたやや被害妄想気味の歌詞も見事だが、説得力のあるメロディと自然体の歌唱力が圧巻。1970年代末を象徴する名曲のひとつ。
10HAPPY BIRTHDAY
故キング牧師の誕生日(1月15日)をアメリカの祝日にしよう、という運動のために書かれたスティーヴィー流ゴスペル・ソング。覚えやすいメロディ、わかりやすいメッセージ、力強いヴォーカルとコーラスなど、この運動のテーマ曲としては最高の1曲だった。