ガイドコメント
キャロル・キングが70年に発表した1stソロ・アルバム。ダニー・クーチ、チャールズ・ラーキー、ジェイムス・テイラーらを従えてキャロルのソロの原点といえる世界を構築した1枚。
収録曲
01SPACESHIP RACES
バッキングを務めるジョー・ママらしいドライヴの効いた演奏が楽しめるロック・チューン。キャロルの歌声も力強く、疲れ果てた女の子を宇宙船レースに誘う歌詞も楽しい。この手のユーモアと優しさを併せ持った歌はいかにもゴフィン=キングといったところ。
02NO EASY WAY DOWN
人生の浮沈について歌ったバラード。ピアノやオルガン、そしてホーン・セクションをフィーチャーしたサウンドとクワイア調コーラスをバックに、ソウルフルに歌い上げるキャロル流ゴスペル・ソング。曲名でもある「楽な下りなんてない」という歌詞の一節が泣かせる。
03CHILD OF MINE
のちにシンガー・ソングライターとしてデビューする愛娘ルイーズ・ゴフィンに捧げられたバラード。自身のピアノを主軸にしたサウンドをバックに、娘を励ますように優しく、しかし力強く歌われている。ハープシコードやベースの効果的な使い方も巧みだ。
04GOIN' BACK
ザ・バーズに提供した曲の作者ヴァージョン。ラテン調のリズムに乗って、ジェイムズ・テイラーのアコギやハーモニーをバックに、「子供の頃に戻りたい」とキャロルが歌う自己セラピー・ソング。傷ついた自身の心を癒すための曲だということがよくわかる作品。
05TO LOVE
シンセサイザー+アコギ+ハープシコードという意外なイントロから始まるカントリー・ロック調の曲。冷静すぎて情熱的になれないシャイな女の子の独白が歌われている。ティーンエイジャーの歌だろうが、28歳で歌っても似合うところはさすがキャロル。
06WHAT HAVE YOU GOT TO LOSE
時代に先駆けたフュージョン・サウンドが聴けるアダルト仕様のポップ・ソング。トニ・スターンが歌詞を書いた曲で、失恋した男性を励ましながら「私のことを捕まえて」と求愛してしまうラブ・ソング。6年後なら“AOR”と呼ばれたかもしれないタイプの曲。
07EVENTUALLY
キャロルにしては珍しく社会的/政治的なメッセージが込められたバラード。1960年代の反体制運動の挫折感を嘆きながらも「いつかきっと私たちが……」という希望もここにはある。アコギ、オルガン、ストリングスをフィーチャーしたサウンドも素晴らしい。
08RASPBERRY JAM
幸福な家族の楽しい朝食の様子を歌った曲。フュージョンというよりもむしろジャズ・ロックと呼びたいスリリングなアンサンブルが楽しめる。間奏ではオルガン、ギター、ピアノ、ヴァイブのソロがフィーチャーされ、演奏自体を楽しんでいる雰囲気が心地よい。
09CAN'T YOU BE REAL
教会音楽調のオルガンをフィーチャーしたキャロル流ゴスペル・ソング。非現実的な夢ばかりを追いかけているパートナーに向かって「あなたには現実を見つめることができないの?」と語りかける。あえてクールに淡々と歌ってみせるところが実に上手い。
10I CAN'T HEAR YOU NO MORE
パーカッションをフィーチャーしたR&B調の曲。浮気なパートナーに「もう言い訳は聞きたくない」と三下り半を突きつける歌。キャロルのヴォーカルとダニー・コーチマーのリード・ギターも見事だが、ストリングスもファンキーなムードをより強調している。
11SWEET SWEETHEART
カントリー・ロック・サウンドにR&B調のホーン・セクションを加えたキャロル流ゴスペル・ソング。愛されることの歓びを歌うキングのヴォーカルが輝いている。アビゲイル・ヘイネスらのクワイア調コーラスも好サポート。フェイド・アウトが惜しいと思わせるほどの名演。
12UP ON THE ROOF
ゴフィン=キングが1962年にドリフターズに提供した全米5位のヒット曲の作者ヴァージョン。“気分が落ち込みそうになったら屋根の上に登ろう”と歌われるこの曲は多くの人びとの疲弊した心を癒してきた名曲。キャロルの情感豊かな歌声が素晴らしい。