ガイドコメント
72年リリースのソロ4作目。ハーヴェイ・メイソンやデヴィッド・T.ウォーカーなどが参加し、前作『キャロル・キング・ミュージック』以上にポップ・フィーリングあふれる佳作に仕上がっている。
収録曲
01COME DOWN EASY
コンガとピアノが絡み合うイントロも魅力的なバラード。穏やかな生活への感謝と急激な変化への不安、そして神への祈りもここにはある。単純な“恋の歌”ではないけれど、この世界への真摯なラブ・ソング。人肌のサウンドと人間味あふれる歌声が心地よい。
02MY MY SHE CRIES
伝承古謡のようなバラード。最後には空へ飛んでいってしまった「泣き虫の彼女」とただ踊りたいだけの「嘘つきの彼」との短い物語。ピアノの弾き語りを基調にしたシンプルなサウンドが寓話的なストーリーを織り上げていく。キャロルの自然体の歌声が魅力的。
03PEACE IN THE VALLEY
エルヴィスもとり上げた有名なゴスペル・ソング「谷間の静けさ」と同題のオリジナル曲。「この谷間に平和は来ない」という一節は否定的な印象を与えるが、同時に「新しい光が見える」とも歌われている。ハーヴィ・メイスンの控えめなドラミングが光る。
04FEELING SAD TONIGHT
デイヴィッド・キャンベル編曲の凝ったストリングスをフィーチャーしたバラード。「悲しい気分」と「すべてが順調」との間で揺れ動く複雑な心情が歌われている。タイトなリズム・セクションをバックにしたキャロルの歌声の微妙なニュアンスが胸に沁みる曲。
05THE FIRST DAY IN AUGUST
チャールズ・ラーキーとの共作曲。自身のピアノとデイヴィッド・キャンベル編曲のストリングスだけをバックに、愛する者がいることの歓びと不安が共存する複雑な心情を見事に歌い上げたラブ・バラード。心の揺らめきを劇的に表現したストリングスが圧巻。
06BITTER WITH THE SWEET
チャールズ・ラーキーとハーヴィ・メイスンが奏でるファンキーなリズムに乗って、キャロルが饒舌なラップ調のヴォーカルを聴かせる曲。アルバム・タイトルの通り、“韻も踏んでいるし、意味もある”というソングライターらしい芸を披露してみせた曲でもある。
07GOODBYE DON'T MEAN I'M GONE
レッド・ローズのペダル・スティール・ギターをフィーチャーしたカントリー・ロック調の曲。別れて暮らさなければならない娘への“ラブ・レター”のような歌。「私は片手で子供を抱き、もう一方の手で曲を書いている」という歌詞の一節はまさにキャロルそのもの。
08STAND BEHIND ME
ピアノの弾き語りを基調にしたシンプルなバラード。チャールズ・ラーキーのベースがしっかりとサポートしている。刺激的な存在ではないが、そばにいてくれると安心できる、というタイプのパートナーと出会えた歓びをキャロルが自然体のヴォーカルで歌う。
09GOTTA GET THROUGH ANOTHER DAY
“Rhymes&Reasons”の見本のような歌詞とメロディの一体感を聴かせてくれる曲。失恋の痛手から立ち直ってはいないけれど、それでも何とかしようとしている、という主人公の心情が伝わってくる健気なポップ・ソング。チャールズ・ラーキーのベースも好演。
10I THINK I CAN HEAR YOU
ピアノの弾き語りを基調にしたバラード。神様への祈りの言葉をそのまま歌詞にしたようなキャロル流セイクレッド・ソング。彼女の凛とした歌声と力強いピアノが素晴らしい。中盤から入ってくるベースとストリングスも効果的。フェイド・アウトしてしまうのが惜しい。
11FERGUSON ROAD
ジェリー・ゴフィンとの共作曲。ピアノを主軸にしたカントリー・ロック調のサウンドをバックに、愛した人を忘れるために懐かしい故郷へと帰るつもり、と歌われるバラード。ペダル・スティール・ギターの音色が故郷の香りを運んでくるが、エンディングは怖いほど唐突。
12BEEN TO CANAAN
旧約聖書の約束の地カナンと同名のニューヨーク州の田舎町について歌ったバラード。リラックスした自然体の歌声が胸に沁みる。ピアノにリズム・セクションやストリングスが加わっていくプロセスにはキャロルならではの美しさがある。全米24位のヒットを記録。