ガイドコメント
大ヒット『つづれおり』に続き71年に発表した3rdアルバム。ジャズやソウルのフィーリングを加味し、「ブラザー・ブラザー」などの名曲を生み出した充実作で、豊潤な音楽性を堪能できる。
収録曲
01BROTHER BROTHER
マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」に触発されたニュー・ソウル調の曲。国籍や人種を超えた“兄弟”への共感を込めた歌声が聴き手をやさしく励ましてくれる。ダニー・コーチマーのギターも光るが、パーカッションとサックスも好サポート。
02IT'S GOING TO TAKE SOME TIME
ピアノにエレピが重なるサウンドが心地よいバラード。失った愛から新たな旅立ちまでの間の感情の揺らめきを歌っている。ピアノにエレピが、そしてヴォーカルにハーモニーが絡む瞬間が美しい。翌1972年にはカーペンターズのカヴァーが全米12位のヒットを記録。
03SWEET SEASONS
ホーン・セクションをフィーチャーしたR&B調の曲。「勝つこともあれば、負けることもある」と歌い出される“快い季節”の歌。自然体の歌声が素晴らしい。ダニー・コーチマーのリード・ギターとラルフ・シュケットのオルガンも効果的。全米9位のヒットを記録。
04SOME KIND OF WONDERFUL
ゴフィン=キングが1961年にドリフターズに提供した名曲の作者ヴァージョン。ジェイムス・テイラーのアコギをフィーチャーした演奏をバックに、メロディと歌詞を慈しむようにキャロルが歌うバラード。アンプラグドなサウンドとジェントルなコーラスが心地よく響く。
05SURELY
熱烈な求愛の歌でもあるキャロル流ゴスペル・ソング。複雑な情感や微妙な感覚を見事に表現してみせるソウルフルなヴォーカルが圧巻。ピアノ、オルガン、ギター、ベースなどの好演も光るが、アビゲイル・ヘイネスらのクワイア調コーラスも好サポート。
06CARRY YOUR LOAD
旅を続ける恋人に「荷物を運ぶのを誰かに手伝って欲しくない?」と語りかける歌。苦しみや悲しみを乗り越えてきた者だからこその楽天的な歌声が素晴らしい。プロテスト・ソングを超えたラブ・ソング、という解釈もできる意欲的な佳作。
07MUSIC
音楽の素晴らしさを称えるジャジィなワルツ。「私の頭の中で音楽が鳴っている」という歌詞の一節がいかにもキャロルらしい。効果的に挿入されるコーラスも上手い。カーティス・エイミーのサックス・ソロをフィーチャーしたインストゥルメンタル・パートも圧巻
08SONG OF LONG AGO
盟友ジェイムズ・テイラーとのデュエットが楽しめる曲。テイラーのアコギとハーモニーが光るが、歌うことの歓びに輝いているキャロルの歌声も素晴らしい。「静かに友と再会し、“ずっと昔の歌”を歌う」という歌詞の一節も秀逸。シンプルだが、パワフルな1曲。
09BRIGHTER
「私の毎日を少しずつ明るくしてくれる」と歌われるポジティヴなラブ・ソング。といっても恋人への“愛の歌”ではなく、自身の娘たちに向けて歌われているようだ。チャールズ・ラーキーのベースが先導する軽やかな演奏がキャロルをバックアップしている。
10グロウイング・アウェイ・フロム・ミー
去っていこうとしている恋人に「身体だけでもここに置いていって」と迫る熱烈なラブ・ソング。コンガやヴァイブをフィーチャーした軽やかなリズムとR&B調のコーラスをバックに、1960年代のガールズ・グループ仕様のソウルフルなヴォーカルを披露している。
11TOO MUCH RAIN
ジェイムス・テイラーのアコギをフィーチャーしたバラード。ピアノとアコギを中心に奏でられたサウンドをバックに、ある種の諦観を漂わせた歌声をキャロルが披露している。「私がどうしているかと誰かに訊かれたら……」から始まるトニ・スターンの歌詞も秀逸。
12BACK TO CALIFORNIA
ビートルズの「ゲット・バック」を思わせるキャロル版スワンプ・ロック・サウンドが堪能できる曲。ジョー・ママならではのタイトなバンド・サウンドに乗って、キャロルが楽しそうに歌っている。ダニー・コーチマーのギターとラルフ・シュケットのエレピのソロも光る。