ガイドコメント
1969年発表の4thアルバム。サイケデリック花盛りな時代を受け、ブラス・セクションやパーカッションを大胆に導入。それまでとは異なるサウンドでセンセーションを巻き起こした。
収録曲
01テル・オール・ザ・ピープル
ホーン・セクションやコーラスを導入した大仰なサウンドでファンを驚かせたシングル曲。まるでキリストのように「私についてきなさい」と歌うモリソンにも戸惑わざるを得ないけれど、キャラクターを演じているのだと思えば、これはこれで面白い。
02タッチ・ミー
キャッチーなメロディとゴージャスなアレンジによる3曲目の全米No.1ヒット。ジャングル・ビートをアップデイトしたリズム・パターンがイカしてる。ホーン・セクションとストリングスとの絡みも絶妙で、モリソンのセクシーな歌声の魅力をより強調している。
03シェイマンズ・ブルース
ジャジィな演奏に乗って、モリソンがシャーマンを演じてみせる。ポエトリー・リーディングに近いものだが、モリソンならではの幻想の世界が描かれる。最後の種明かしも含めて、ポップなアルバム『ソフト・パレード』の中では最も彼らしい。
04ドゥー・イット
モリソンとクリーガーとの共作曲。「世界を支配するのは君たちだ」と子供たちに呼びかける唄。発想は悪くないが、モリソンの歌声にカリスマが感じられないところが辛い。数々の名曲の中では地味な1曲と言えそうだ。だからこそ聴いておきたい。
05イージー・ライド
カントリー調の編曲が施された軽快なロカビリー・ナンバー。モリソンがシングルとしてのリリースを望んでいた曲だが、実現しなかった。かつてのカリスマは失われつつあったものの、この曲での彼の陽気な歌声は充分に楽しめるものだ。
06ワイルド・チャイルド
妻のパメラが歌詞の一部を書いているらしいモリソンの曲。彼らしい曲で彼らしい歌声が聴ける。呪術的なリフの合間に別次元の演奏が挿入されるギミックも面白い。2分半の小品だが、2年前なら8分は演奏できたはずのモチーフ。
07ラニン・ブルー
R&B調の曲とブルーグラス調の曲を合体させたかのような、多重人格的なミニ組曲。冒頭のア・カペラでモリソンはオーティス・レディングの死に触れて「残された俺は彼の唄を歌おう」と歌っているが、R&B調のパートはたしかにオーティス風。
08ウィッシュフル・シンフル
大編成のストリングスとホーン・セクションを導入した曲。クリーガーならではのポップでメロディックな曲だが、歌詞にはモリソン特有の表現もあり、彼らしい歌声も聴ける。ストリングスはやや大仰に過ぎるかもしれないが、木管楽器の音色は美しい。
09ソフト・パレード
同名アルバムのタイトル曲。8分半を超える大作。唐突な演説から始まり、バロック調のギターをバックに歌い、その後、何度かのリズム・チェンジを繰り返しながら、モリソンはさまざまな歌声を披露する。劇中劇を観ているような面白さがここにはある。