ガイドコメント
脱ラテン・ロック時代のサンタナが1974年に発表した8作目。バンドとしては崩壊寸前の状態で録音されたアルバムだが、アイアート・モレイラやスタンリー・クラークらが参加し、ジャズ指向のサウンドに仕上がっている。
収録曲
01SPRING MANIFESTATIONS
アイアート・モレイラ&フローラ・プリム夫妻によるサウンド・エフェクトをフィーチャーしたトラック。金属系の鳴り物、風のような唸り声、鳥の声みたいな音などがアマゾンのジャングルをイメージさせる。昼なお暗い密林ではなく、異様に明るい密林がここにはある。
02CANTO DE LOS FLORES
チェピートとペラーサのコンガ&ボンゴから始まるインストゥルメンタル曲。フルートとエレクトリック・ピアノをフィーチャーした演奏はラテン音楽のスタンダード曲のように美しいが、その背景にはアマゾンのジャングルの妖しげなムードが濃厚に漂っている。
03LIFE IS ANEW
新加入のレオン・パティロが歌う爽やかなポップ・ソング。彼の瑞々しい歌声はこの曲にはよく似合っている。後半のインストゥルメンタル・パートではコスターのオルガン・ソロに続いて、カルロスの秀逸なギター・ソロが聴ける。ギターの音色の美しさも格別。
04GIVE AND TAKE
サンタナならではのアフロ・キューバン・ファンク・ビートが炸裂する曲。パティロの独りデュエットやサックス・ソロなども楽しいが、やはりチェピートのティンバレス・ソロが圧巻。後半はフュージョン寄りの展開になるが、チェピートがいればサンタナ・サウンドは健在。
05ONE WITH THE SUN
レオン・パティロのヴォーカルをフィーチャーした曲。序盤はAOR仕様のポップ・ソングだが、長めの間奏ではキーボードやギターの激烈なソロ・プレイが堪能できる。特にカルロスのソロはファン必聴の逸品。最後は再びヴォーカル曲となってメロウに終わる。
06ASPIRARIONS
カルロスが敬愛するジョン・コルトレーンへのオマージュのようなインストゥルメンタル曲。スタンリー・クラークとレオン・チャンクラーが加わった変則的なラテン系ビートに乗って、ジュール・ブリザードがコルトレーンばりのソプラノ・サックス・ソロを披露している。
07PRACTICE WHAT YOU PREACH
カルロスのギターの艶やかなロング・トーンを活かしたイントロが泣かせる。レオン・パティロのジェントルな歌声も心地よい。「君に捧げるサンバ」を連想させる終盤のギター・ソロも魅力的。導師スリ・チンモイをイメージした曲だろうが、抹香臭くないポップ・ソング。
08MIRAGE
『キャラバンサライ』のポップな続編、と言えないこともない中近東風のメロディを主題にした曲。作者でもあるレオン・パティロのヴォーカルがほぼ全編でフィーチャーされているが、彼の歌声に絡むカルロスのギターも良い。シンプルだが印象的な1曲。
09HERE AND NOW
カルロスのエレクトリック・ギターとジュール・ブリザードのソプラノ・サックスが妖しく絡み合う長い前半に続いて、レオン・チャンクラーのジェットマシーン仕様のドラミングを主体にした後半に突入する。アルバム終盤の強力なメドレーを形成する最初の1曲。
10FLOR DE CANELA
サンタナならではのラテン・パーカッション陣が奏でるリズムを中心にしたインストゥルメンタル曲。ロング・トーンを多用したカルロスのギターは饒舌ではないが、言うべきことははっきりと言っている。ラテン・ロックとフュージョンの間を揺れ動く曲のひとつ。
11PROMISE OF A FISHERMAN
ブラジル・バイーアの作曲家ドリバル・カイーミの曲を基にしたそうそうたる布陣によるスーパー・セッション。超絶技巧を披露しまくるアルマンド・ペラーザのボンゴやスタンリー・クラークのベースに触発されたのか、カルロスのギター・ソロも熱く燃え上がる。
12BORBOLETTA
ブラジル音楽を代表する打楽器の巨匠アイアート・モレイラのパーカッションとチャントをフィーチャーしたインストゥルメンタル曲。アマゾンの奥地で美しい蝶の群れが舞い踊る様子をイメージさせる。打楽器の映像喚起力を改めて思い知らせてくれるトラック。