
デビュー20周年記念。キリンジのEMI、コロムビア時代(つまり5枚目から10枚目のアルバムまで)から選曲されたコンピレーション盤。“甘い憂鬱”と名付けられたタイトルにずるいな〜と思いつつ、後期もしみじみいいバンドだったなとあらためて。寒い季節によく似合います。★

ワーナー期の作品からメランコリック&メロウな楽曲をセレクトしたデビュー20周年企画。CMで再注目された「エイリアンズ」など、仄かな毒気と色気、マニアックな遊び心を忍ばせたスパイシーなポップ感覚が痛快。しなやかなアンサンブルや甘くほろ苦いハーモニーも絶品だ。

コトリンゴ脱退後5人編成となっての初アルバム。Charisma.comと堀込高樹のデュエット「AIの逃避行」のように、前作から引き続いた躍動感ある曲もあるが、全体的に肩の力が抜けたような、いい意味でのBGM感のある曲が増えているのが特徴。AOR、ジャズ・ロックなどの要素をリラックスして取り込んでいる。

5人体制になって初音源となるシングル。表題曲は彼らの蓄積が明確に表われたクオリティの高いシティポップでありつつ、ピュアな愛情やフレッシュさも感じさせる懐の深い佳曲だ。カップリングはコトリンゴ在籍時のライヴで、Negicco参加のキュートなポップスとコトリンゴの歌声が白眉。

6人組としてスタートしたKIRINJIの2作目は、2014年8月に発表した『11』のライヴの音源を基に、大胆なポスト・プロダクションを施して再構築した作品。随所で楽器が差し替えられており、『11』が装いも新たに生まれ変わっているのが面白い。ライヴならではの臨場感もしっかり残っている。

“真夏”を謳いつつ、ヴォーカルと旋律はむしろメランコリック。日本の晩夏を思わせるつくりになっているところが、いかにもこの人たち。新曲は2曲だが、そこに2014年ツアーのライヴ音源を4曲プラス。バンドとしての躍動感を加えることで、シングルとはいえミニ・アルバムに近い聴きごたえに。

KIRINJIのメンバー6人が、それぞれ3曲ずつセレクトしたサマー・ソング・コンピレーション。彼らが所属するヴァーヴ・レーベルからのセレクトで、マーク・ジョンソンがかぶるなど、ほかのコンピレーションにはないユニークな面も。彼らのルーツを垣間見ることができる。

表記をあらためての新生KIRINJIは、コトリンゴと弓木英梨乃という女性メンバーを加えての6人編成。男女混声のコーラス多用や、演奏にニューウェイヴ的なエッジが加わったこともあり、80年代にムーンライダーズが主導していた“水族館レーベル”を連想させるところも。堀込高樹の歌声も、心なしか伸びやか。

選曲家・橋本 徹による、レーベルを超えた2枚組セレクション。兄弟各人のソロ曲も。デビュー作収録の「雨を見くびるな」など90年代後半の曲が音楽的な情報てんこ盛りだったのに対し、ゼロ年代作品が次第に“ワビサビ”を感じさせるようになるなど、いちユニットの次元を超えた“時代の証言”に映る妙味も。★

堀込泰行がこの10作目もって脱退するキリンジだが、作品の出来はいつも通りハイ・クオリティ。比較的シンプルでアコースティックな曲が目立つが、瀟洒なアレンジとひねりの利いた歌詞、ナチュラルで美麗なメロディは今回も健在。キリンジに捨て曲なし、の法則は崩れることがない。★

2012年10月に堀込泰行がバンドを脱退、“堀込兄弟によるキリンジ”の実質的なラスト・アルバム。日本的な叙情性と見晴らしのいいサウンドスケープがひとつになった「早春」、震災以降の社会を反映したメッセージ・ソング「祈れ呪うな」など、豊かな音像と奥深い思想が込められた珠玉のポップ・チューンが並ぶ。

キリンジのコンピレーション2枚組。ディスク1はセルフ・カヴァー集で、さまざまなアーティストたちに提供したナンバーを彼らならではの深みのあるアンサンブルが冴える新録音で聴かせる。ディスク2のオリジナル・シンガーによる楽曲と聴き較べれば、楽曲とアーティストそれぞれが持つ魅力を楽しめる内容だ。

近年では兄弟それぞれが別ユニットでも活動。その影響もあってか、本来持ち味とする職人的なソングライティングに、新たなひねりが加わった8枚目のアルバム。兄・高樹が「都市鉱山」で聴かせるもろデヴィッド・バーン調の歌声にはびっくり。南米のフォークトロニカに触発されたとおぼしき曲も。

「夏の光」は粒立ちのいい音が弾ける季節感いっぱいのポップ・ソング。細分化されたスピード感のあるリズムとのびやかなメロディが調和する。ボーナスは2009年12月、Billboard Live TOKYOにおける堀込兄弟+オルガン、ドラムスという編成でのライヴ。メジャー・デビュー前の「休日ダイヤ」にキリンジの本質的な魅力が凝縮。

3レーベルの音源から選曲したリマスタリング・ベスト。1枚目に堀込泰行、2枚目に兄・高樹の作品をまとめた構成が巧み。キリンジの音楽の謎めいた深みが、兄弟それぞれの際立った個性に由来することがよくわかる。最初期の曲の印象、鮮度が10年経っても変わらないのが凄い。

高値で取引されている幻のインディ・アルバムに、全曲のインスト・ヴァージョンを加えたリイシュー・アルティメイト盤。デビュー前なのだから、もちろん若いし青いが、すでに完璧なまでに“キリンジ”であることに驚かされる。

シングル扱いで音楽配信された曲を多く含み、粒揃い。引き締まった8ビートに洗練されたハーモニーが乗る「家路」、60〜70年代の多彩なロックの要素を用いてスケール感のあるポップ・ミュージックに仕上げた「ジョナサン」、意外性のある単語を使った歌詞が印象に残る「もしもの時は」などで“らしさ”を発揮。

「朝焼けは雨のきざし」は堀込高樹らしい、ひねりが利きつつ美しいメロディをもつポップ・ソング。マイルドな曲調を渋いホーンが引き締める。ほかは日比谷野音でのライヴ。リズムを一変させた「雨は毛布のように」、よりパワフルになった「グッデイ・グッバイ」など、オリジナルとアレンジが違うのが聴きどころ。決定的名曲「エイリアンズ」は円熟の味わい。

3年ぶりの、セルフ・プロデュースによるフル・アルバム。バンドではないユニットの強みで、楽曲に寄ってアレンジはさまざまでカラフル。力みのない、余裕も感じられる成熟した大人のポップス。リラックスして聴くもよし、ぐーっと集中して聴くもよし。

2年ぶりのシングル。(1)はエレクトロな仕上げのミディアム。翳りのある美メロの典型的高樹節とピコピコ・サウンドの組み合わせが新鮮。(2)は泰行らしいキャッチーでスケールの大きなメロディが気持ちいい。山本拓夫が編曲したビッグバンド入りの(3)はノスタルジック。

堀込兄弟の紡ぎ出す甘い甘いメロディは実のところ、キャッチーなのかどうか判断に苦しむ。あまりに美しすぎて、すっと体に入ってこないというか。でも結局いい曲だし、いつの間にか口ずさんでいる自分がいるのだ。妙にストイックな歌詞も最高だ。

メイン・ナンバーの「YOU AND ME」は、ミディアムのラブ・ソング。「嫉妬」と「繁華街」は、2003年のツアーからのライヴ録音。いずれの曲も、言葉、アレンジが洗練されていて、無駄なものをそぎ落としたクールな印象がある。

2003年11月の武道館ライヴを収録。躍動的な(1)はインディーズ時代から曲作りのセンスが突出していたことを伝える。7拍子の(11)は変拍子をものともしない疾走感と一体感のある演奏が魅力。ペダル・スティールやオルガンが効果的な(13)にはスタジオ版を上回る温かさを感じる。

先行シングル(2)(11)を収録した2年ぶりの5枚目のアルバム。もはや永遠のワン・パターンのなかでの拡大再生産を繰り返して許されるポジションにいないことを意識しての意欲作といえようか。独特の濃密さを上手に分散させながら、あえて軽さを意図した試みは判定に迷う。

(1)は堀込泰行のポップ・センスが発揮された夏っぽいイメージの曲。リズムはレゲエを基調にしつつ、感触はライト・ソウルな仕上がりで、どこかシンプリー・レッドを思わせる。(2)は波の音をSEに使った涼しげなハウス。(3)は泰行の自在なスキャットがシンガーとしての魅力を伝える。

レーベル移籍後の第1弾マキシは、極上のポップ・チューン6曲とそのインスト6曲を収録。生楽器とストリングスによって巧みに織り上げた音模様が、虹色に美しく輝いている。もちろんプロデュースは堀込兄弟と鉄壁のコンビネーションを誇る冨田恵一。

兄弟デュオ・キリンジの実に1年ぶりとなるリリースは、弟・泰行のプロデュース。バーズへのオマージュとも思えるような和みのドライヴィング・チューンで、ラップスティール・ギターの音色が心地よい。DRY & HEAVYによるリミックス2曲を収録。

兄弟初のセルフ・カヴァー集、だけど、オリジナル・アルバムと言ってもいい! デビューして4年、方々に楽曲提供している兄弟が、このたびちらばっていた珠玉の曲たちを唄う今作は、ポップス職人の本領発揮とばかりに、高濃度と透明性という両極を達し得た仕上がりになっている。

リミックス集第2弾。原曲のヴォーカルやメロディは生かされているので、リミックスというより各アーティストの解釈でリメイクしたもの、という印象。ジャズ、ロック・ステディ、テクノなど多様なアプローチが並び、それがキリンジの音楽がもつ普遍性を浮き彫りにしている。

弟・泰行作の(1)はキーボードを使用せず、ギター・アンサンブルとフルートをフィーチャーした音が新鮮。翳りのあるメロディとラフな演奏は聴くほどに味がでる。兄・高樹作の(2)は弦セクションを得たアコースティックかつ重厚なスティーリー・ダンの趣き。

ソウルからフォーク、カントリーからサルサまでと音幅の広さは相変わらずながら、何気ない言葉を歌ったシックな印象の新作。ピアノ、ストリングスやマリンバが鳴る、聴き心地の良さを重視した作り。とはいえ「BBQパーティー」の詞など毒気は健在。

打楽器群が以前にもましてパカパカいうようになったせいか、オフ・コースぽさは後退した。(2)では、70年代後半の大貫妙子作品を連想。作曲能力はある人たちだと思うので、ヴォーカル面での研鑚がやはり勝負どころでしょう。着せ替え(?)ジャケットつき。

爽やかなメロディと柔らかなヴォーカル&コーラス。そして、「かどわかされて」など独自の言葉使いの妙で泣かす歌詞満載の待望のファースト。凝ったサウンドを巧みに聴かす、軽妙でロマンティックなポップ・サウンドはまさに日本のニック・デカロ、ですね。

90年代ソフト・ロックを聴かせてくれる男性兄弟二人組ユニットのメジャー・デビュー作。洗練されたサウンドと甘く柔らかな歌声には、今の都市が持っている叙情性が優しく映し出されている。南佳孝の流れをくんだシティ・ポップスの最新型と言えるかも。

聴いた瞬間に目の前に自然の風景が広がる、と各方面で話題沸騰中の兄弟デュオのデビュー・マキシ・シングル。“パラッパッパ・パッパラ”な(1)を聴けば、誰もが頭の中を爽やかな風が吹き抜けるはずだ。光と風が描き出したソフト・ランドスケープ・ポップ。