ガイドコメント
8ヵ月の短いスタンスで91年11月に発売された2nd。60年代の良質ポップス、70年代の黄金期ロックなどを飲み込んだ心地良いメロディとひらめきときらめきに満ちた歌詞が素晴らしい1枚。
収録曲
01ウサギのバイク
“ウサギのバイクに、優しいあのコを乗せて……”。小川のせせらぎの如く流れゆくアコギの調べに乗せて描かれるは、夢いっぱいの逃避行。“破滅へ向かう歓び”という恋のマゾヒズムを、あくまでキュートに描いたリリックは実に芸術的。
02日曜日
“きのうの夢で手に入れた魔法”で、はちゃめちゃに楽しい幻の森へひとっ飛び。シュールでカラフルな映像が飛び交う夢(妄想)の世界を、“みんなのうた”的キャッチーなメロディに乗せて歌い上げた朗らかなる現実逃避ロックなり。
03名前をつけてやる
それは絵画で言えば、ダリのように奇妙な静けさを湛え、反面ミロのように天真爛漫な筆づかい。マサムネ・ワールドに浮かぶ摩訶不思議な風景をリズミカルに連ねて描いていく、これぞスピッツならではのシュールレアリスム・ロック。
04鈴虫を飼う
鈴虫の声に耳を澄ませ、物思いに耽る……、そんなマサムネ少年がここにいる。無邪気でメランコリックという思春期の微妙な心持ちを描いた青臭いナンバーだ。童謡のごとく懐かしいメロディは、意外にもスピッツ一ロッカーな三輪テツヤの作。
05ミーコとギター
91年という時代をもろに反映したマンチェスターなロック・サウンドに乗せて描くのは、やっぱり弱気な主人公の片想い。天真爛漫な“ミーコ”への無垢な憧れ、そしてもどかしい想いが、強烈なグルーヴとなって紡ぎ出される。
06プール
“君”とのひと夏を淡い風景で描いた、切なくも爽やかなサマー・チューン。ゆらめきながら轟くギターは、まさに真夏の白昼夢。そんなドリーミーなサウンドをまとった二人の無邪気な日々は、あたかも夏がもたらしたひとときの魔法のようだ。
07胸に咲いた黄色い花
僕は恋をした、だからもう一人じゃない……。そんな喜びを“胸に花が咲く”と例えた、いわばスピッツ版「バラが咲いた」。あくまで儚く控え目な花を描くところがマサムネ君らしくていじらしい、キュートな3分間ポップス。
08待ちあわせ
結成当初はパンク・バンドだった、そんなスピッツの意外な歴史を垣間見る、疾風怒濤のロック・ナンバー。描かれるのは、宇宙空間と百万年の時という破格のスケールを舞台にした美しき悲恋。これぞスピッツ版ロックな『七夕物語』。
09あわ
わらべ歌を思わせる懐かしいメロディに、シュールでコミカルな詞を乗せた、摩訶不思議なスロー・ナンバー。マサムネ君のほのぼのとした語り口と、“あわ”のごとく頼りなげに彷徨うムーグのコンビネーションがなんとも味わい深い。
10恋のうた
想うあまりに魂が抜け出して、君の周りを彷徨っている……、そんな健気で一途な“僕”の恋心を綴る、名曲の呼び声が高い初期の秀逸作品。懐かしく温かいメロディと、草野マサムネの人柄がにじむ優しいリリックは、日本人の繊細な情緒に訴える。
11魔女旅に出る
旅立つ“君”を見送る心情を、ファンタジックな詞の世界とスケール感溢れるストリングス・サウンドで描いたハートフル・ナンバー。“いつでもここにいるからね”と、“待ち”のスタンスを取るやさしい別れの歌は、正宗ならでは。