ガイドコメント
前作の大成功に引き続き、「オネスティ」「マイ・ライフ」「ビッグ・ショット」などヒットを連発した78年の6thアルバム。ジャズ的な要素をアルバム作りに持ち込んでいるのも魅力だ。
収録曲
01ビッグ・ショット
ヘヴィなリズムのロック・チューン。自嘲的なニュアンスも感じさせる皮肉満載の歌詞が叩きつけるように歌われる。唐突に曲調が変わる陽気なブリッジが効果的で、「大物になりたかった」のはいったい誰なのか、あえて特定していないところも巧い。
02オネスティ
03マイ・ライフ
無駄な音がひとつもないシンプルなサウンドが秀逸なポップ・ソング。ロサンゼルスで生きる道を選択した同郷の旧友についての歌詞も良い。彼の言い分を聞いて、責めるわけでもなく、嘆くわけでもない態度が主人公の心の痛みを伝える。全米3位のヒット曲。
04ザンジバル
ザンジバルを舞台にした歌。フレディ・ハバードのトランペット・ソロをフィーチャーした4ビート・パートも含むフュージョン・サウンドが心地よい。ムハマド・アリやピート・ローズやヤンキースが登場し、野球の比喩で恋を語ってみせる歌詞もビリーらしい。
05恋の切れ味 (スティレット)
女の切り裂き魔を描いた歌。実際には“男心を傷つける女”の比喩的な表現なのだろうが、歌詞にはそんな説明はない。サスペンスを盛り上げる不穏なサウンドと聴き手の不安を煽るようなビリーのヴォーカルが怖い。ユーモアのセンスが唯一の救い。
06ロザリンダの瞳
ニューヨークのスパニッシュ地区を舞台にした歌。主人公は、プエルトリコ人バンドに参加しているキューバ移民二世(三世?)のミュージシャン。「キューバの青い空」を映した瞳の娘に恋している。ラテン系のリズムとエキゾティックなサウンドが楽しい。
07自由への半マイル
ニューヨークのイタリア人地区を舞台にした歌。家族のために働いてきたが、自由になりたい、と願う主人公が求めているのは“半マイル向こうにある俺のもうひとつの世界”。ホーン・セクションをフィーチャーしたモダンなR&Bサウンドがイカしてる。
08アンティル・ザ・ナイト
ライチャス・ブラザーズをイメージした一人二重唱で歌われる劇的なバラード。フィル・スペクター調の重厚な“音の壁”もライチャスばり。君に会える夜まで頑張って仕事をしよう、というだけのラブ・ソングだが、誇大妄想的なまでに大仰なサウンドが快感。
09ニューヨーク52番街
コンサートの後の気楽なジャム・セッションを思わせる洒落た小品。ジャジィなサウンドに乗って、ビリーが弾むように歌い、ハート・ビートと音楽のビートを結びつけた歌詞も良い。できれば30分くらい聴かせて欲しいところだが、残念ながら2分半でフェイド・アウト。