ガイドコメント
プロデューサーに笹路正徳を迎え、93年9月にリリースされた4枚目。サウンドもひとまわりスケール・アップし、新生スピッツの予感にあふれた1枚。「夢じゃない」ほかシングル5曲が収録。
収録曲
01クリスピー
“クリスピーはもらった!”と、アルバム『Crispy』のオープニングをガツンとキメる、これぞ不細工なモグラ(=スピッツ)の勝利の宣誓。派手なホーンを従えたサウンドの激変にも決意がほとばしる、心機一転の強力なポップ・チューン。
02夏が終わる
夢見心地のような夏が、音も立てずに終わって行く……、そんなちょっとした切なさと動揺を描いた、爽やかなサマー・チューン。涼しげなコンガに、洗練されたホーン&ストリングスが、ほんの一時の、幻のリゾートを演出する。
03裸のままで
部屋の片隅で妄想に耽っていた少年が、遂に外へ飛び出した! そんな感じの突然変異を見せた、カラフルなポップ路線の6th。陽気なホーン&ストリングスのアレンジは、PVでドデカイ蝶ネクタイをつけた正宗の姿とぴったり。
04君が思い出になる前に
果てない航海へ出る主人公は、一緒には行けない”君”に、「優しいふりだっていいから」と笑顔を乞う。想い出になってしまう前に……。穏やかな大海を思わせる、伸びやかなメロディで綴られる、美しくも儚いラヴ・ストーリー。
05ドルフィン・ラヴ
大胆なホーンのアレンジを加えた、夏の開放感いっぱいのポップ・チューン。天真爛漫な君に憧れて仕方ない弱気な僕……。「僕を小馬鹿にしているような女の子に惹かれてしまう」という草野マサムネならではの、健気な愛の歌である。
06夢じゃない
儚く溶け去ってしまいそうな“君”のいる風景を、“いびつ”な力で守りたい……ちょっと弱気で不器用な主人公が綴る、イノセントなラヴ・バラード。白昼夢のごとくどこか幻想的なサウンドが、美しい詞世界の背景を彩る。
07君だけを
オーケストラをフィーチャーした、ドラマティックなラブ・バラード。なれど、描かれるのは恋愛よりむしろ思春期の青臭さ。自分が大人になりつつあるという動揺の中で、君への想いだけは失うまいとする切ない少年像が浮かぶ。
08タイムトラベラー
過去への時間旅行に、自分が前向きに変わって行く心の変化を重ねた、後味爽やかなポップ・チューン。多面性を持つスピッツも、一般には“爽やか”なイメージが色濃いが、その一面を顕著に見せたのは、実はこの作品が初めて。
09多摩川
ポップでカラフルな『Crispy』の中で異色の、幻想的で淡いスロー・ナンバー。初期のドラゴンクエストのような、ゲーム音楽にも通じる淡々としたサウンドだ。草野マサムネと田村明浩が、元々はファミコン友達という歴史に関係か!?
10黒い翼
『Crispy』の最後を飾る、荘厳なエピローグ。ストリングスの壮大なアレンジをバックに悠々と歌い上げる様は、いつになく誇らしげ。なれど“白い翼で飛んで行く”の真逆を行くところは、あくまでマイノリティ追求型の正宗君だ。