ミニ・レビュー
前2作から続いた三部作として、ひと区切りつけたと言われる74年度作品。シングル・ヒットした(4)(6)はいずれもアップ・テンポで、後者は無能な大統領を批判した辛らつな曲だったりするが、全体としては穏やかな作風で、絶頂期においても平常心を保つ。
ガイドコメント
『トーキング・ブック』『インナーヴィジョンズ』と2枚の名盤に続く74年発表作品。ジャクソン5、ミニー・リパートンといったゲスト陣も参加した意欲的な1枚で、全米No.1を記録。
収録曲
01SMILE PLEASE
ボサ・ノヴァ調の穏やかなサウンドに乗ってリラックスした歌声がフィーチャーされるバラード。マイケル・センベロやボビー・ホールらによる見事な演奏をバックに、スティーヴィーが微笑みの素晴らしさについて歌っている。派手さはないが、美しい曲のひとつ。
02HEAVEN IS 10 ZILLION LIGHT YEARS AWAY
神の存在について歌ったゴスペル調バラード。ポール・アンカら豪華ゲスト陣のハンド・クラップやソウルフルなコーラスをバックに、スティーヴィーが素晴らしい歌声を披露している。シリアスな歌だが、ユーモアのセンスも忘れないところがいかにも彼らしい。
03TOO SHY TO SAY
シャイなために告白できない恋心を歌った美しいラブ・バラード。ジェイムズ・ジェマーソンのアコースティック・ベースとスニーキー・ピートのペダル・スティール・ギターがスティーヴィーのシンセサイザーとともに極上のメロウなサウンドの世界を作り上げている。
04BOOGIE ON REGGAE WOMAN
シンセサイザーを駆使したファンキーなリズムで迫る「レゲエ女のブギ」。スティーヴィーならではの自由な発想から生まれたフレキシブルなダンス・ミュージック。発表当時は斬新だったが、10年後には見事にスタンダード化していた。全米3位のヒットを記録。
05CREEPIN'
シンセを効果的に使ったメロウなラブ・バラード。ミニー・リパートンの艶っぽいバック・ヴォーカルがスティーヴィーの歌声と絡む瞬間がとても美しい。間奏のハーモニカ・ソロも秀逸。アルバム『ファースト・フィナーレ』の中ではやや地味な曲だが、この心地よさは格別。
06YOU HAVEN'T DONE NOTHIN'
ニクソン大統領の欺瞞を批判した辛辣なメッセージ・ソング。ホーン・セクションをフィーチャーしたファンク・サウンドとジャクン5のコーラスをバックに、スティーヴィーが最高にソウルフルなヴォーカルを披露している。全米No.1ヒットを記録。
07IT AIN'T NO USE
恋の終局を歌ったラブ・ソング。ミニー・リパートン、デニース・ウィリアムス、レニ・グローヴスらによるゴージャスなコーラスをバックに、スティーヴィーが表情豊かなヴォーカルを披露している。彼自身の結婚生活の終わりを表明するような歌詞も興味深い。
08THEY WON'T GO WHEN I GO
自身の運命について歌ったスティーヴィー流ゴスペル・ソング。ピアノとシンセによる絶妙のアンサンブルをバックに、メランコリックだが決してネガティヴではない瞑想的な歌声を披露している。派手さはないものの、彼の人生を示唆するものとして重要な曲のひとつ。
09BIRD OF BEAUTY
疲弊した心を休めるための“マインド・ツアー”について歌った曲。より能動的な瞑想による心の旅、といったところか。デニース・ウィリアムスらによる女声コーラスをバックに、スティーヴィーがリラックスした歌声を聴かせる。彼らしい発想による癒しの歌。
10PLEASE DON'T GO
去っていこうとしている恋人に「行かないで」と懇願するストレートなラブ・ソング。間奏のハーモニカ・ソロも含めて、前半は典型的なスティーヴィー流ポップ・ソングだが、豪華なゴスペル調クワイアをバックに、ソウルフルに歌いまくる終盤の展開はまさに圧巻。