ガイドコメント
ミリオン・セラーとなった95年9月発表の6枚目。大ヒット曲「ロビンソン」「涙がキラリ☆」をはじめ、名曲がずらり。J-POPシーンにおけるスピッツの存在感が、より明確化した記念碑的1枚。
収録曲
01ハチミツ
孤独だった二人の心が、“ハチミツが溶ける”ように交じり合っていく……、そんな初恋の始まりを描いたハッピーなポップ・チューン。バンド・サウンドをかくもメルヘン・タッチに鳴らせられるのは、我らがスピッツ・オンリーだ。
02涙がキラリ☆
浴衣姿の君を、ホントはちょっと触りたい……。思春期の胸キュンな一夜を綴る、情緒あふれるサマー・チューン。天の川のごとく、煌びやかかつダイナミックに轟くギターを背景に、マサムネの歌声はどこまでも爽やかで、やわらかい。
03歩き出せ、クローバー
瑞々しいサウンドと穏やかなグルーヴ感を湛えた、“若くて青いクローバー”のごとく爽やかなナンバー。なんと映画『フォレスト・ガンプ』の壮絶な戦争シーンにインスパイアされたという草野マサムネ。凡人の及ばぬ研ぎ澄まされた感性は圧巻。
04ルナルナ
このキュートでイノセントなサウンドの雰囲気を、ルンルン気分ならぬ“ルナルナ気分”とでも言おうか。「プール付きのラブホテルのイメージ」から、かくもメルヘンチックなポップ・チューンが生まれるとは、天才の感性は計り知れない。
05愛のことば
“なんとなく”な日常に転がる“愛”を、メロディいっぱいに描き上げたドラマティックなバラード。展開に沿って次第に色彩を増すリリックは、クライマックスで切ないほどに美しい閃光を放つ……まさに圧巻の絵画のごとくである。
06トンガリ'95
思春期の反骨精神をロックにぶちまけた、青臭くてパンキッシュなナンバー。原点であるパンク・バンドへの回帰と言える作品だ。ちなみにSpitzは、ドイツ語では“尖った”の意。“トンガリ”とは自分たちのことを指しているのか……?
07あじさい通り
雨降りの日のアンニュイな気分を思い起こさせる、スピッツには珍しいマイナー・チューン。といえども、琴線に触れるメロディの美しさは現在。ノスタルジックな気分をそそる、地味ながらも味わい深い名曲である。
08ロビンソン
思春期のわけもない切なさと、日本の原風景が溶け合い、宇宙へと舞う……。「誰も触れない二人だけの国」の国家は、儚くもロマンにあふれ、日本人の我々に、どこまでも懐かしい。日本中をスピッツ・カラーに染め上げた大出世作。
09Y
あどけなかった少女が、羽ばたいていく感動的なシーンを捉えた、芸術的スロー・バラード。木管楽器の調が、美しい情景描写をさらに引き立てる。ちなみに、タイトルは“Y字路”の意味で、出会いと別れを意味しているとか。
10グラスホッパー
“裸で跳ねる”男女をgrasshopper(=バッタ)になぞらえた、まさに跳ねるがごとくのアッパーなロック・チューン。男女の激しい交わりあいも、ここでは楽しいじゃれ合い。エロティシズムを超越し、むしろ童心の無邪気さ全開だ。
11君と暮らせたら
“可愛い”歳月を、君と暮らせたら……瑞々しい“僕”の憧憬を、フォーク・ギターの爽やかな響きに乗せて描く。夢いっぱいのメロディと素朴なサウンドは、トワ・エ・モアをはじめとした、昭和のピュアなフォーク・ソングを思わせる。