ガイドコメント
ストリートのエネルギーを素朴に表現し、ビリーならではの郷愁感あふれる仕上がりが印象的な74年の3rdアルバム。名曲「スーベニア」ほか、人生の影の部分を掘り下げていく作風が魅力だ。
収録曲
01街の吟遊詩人は…
自らを“Streetlife Serenader”と称していたビリーならではのバラード。ピアノ中心の音作りや劇的な展開も彼らしく、“Streetlife”に関わり続ける覚悟も感じさせる。この初期の名曲を聴いて触発された若いシンガー・ソングライターは少なくない。
02ロスアンジェルス紀行
ロサンゼルスで暮らす人々を描いた曲。イーグルスを思わせる曲で、マウスハープが効いている。ニューヨーカーらしいシニカルな視点から描写した歌詞には特に新味はないが、東海岸の人々にとっては「そうそう、わかるわかる」的なスケッチ。
03場末じみた場面
ありふれたメロディがとても楽しく響く曲。アイロニーに富んだタイトルだけでも面白いが、さらに曲調がポップというおかしさ。アメリカ人流のギャグを細部まで理解するのが難しくても、彼の描く“場面”自体のユーモアが分かれば、笑って聴ける1曲になるはず。
04ルート・ビアー・ラグ
ライヴでもおなじみのインストゥルメンタル曲。アップ・テンポのややアクロバティックなラグタイム・ピアノが楽しめる。ピアノを弾いたことのある人なら、自分でも弾いてみたいと思うはず。プレイすることを楽しんでいるビリーの気持ちがよくわかるナンバー。
05ロバータ/街の恋物語
ロバータという名の恋人に語りかけるラブ・バラード。初期の“Silly Love Songs”のひとつだが、歌詞の中の女性の描写などはいかにもニューヨーク出身のシンガー・ソングライターらしい。意外にも、ライヴでは採り上げられる機会の少ない曲。
06エンターティナー
エンタテイナーについて書いた曲。チープな笛のような音色のシンセサイザー、バンジョー、フィドルが効果的に使われている。やや自嘲気味のシニカルな視点も彼らしいが、決して卑下しているわけではなく、“Show must go on”の姿勢もここにはある。
07ビッグ・タイム・スペンダー
ゴスペル調のバラード。ペダル・スティール・ギターが効いていて、ユーモアのセンスを感じさせるタイトルもいい。ラブ・ソングだが、口説き方がうまく、「君だけに時間を費やしている」という一節をポジティヴに活用する、という展開が成功している。
08週末の歌
まさに“週末の歌”。毎日の肉体労働で疲れているけど今日は週末…… という歌だから、サウンドも陽気なリズムで快調に飛び跳ねる。といっても底抜けに明るいわけではなくて、週末でも仕事のことが頭から離れないところがビリーの歌らしい。
09スーベニア
ピアノの弾き語りで歌われる失恋の歌。フックの“Every year's a souvenir”の一節が泣かせる。余計な説明はないが、それでも失恋の歌だということはわかるところがいい。わずか2分間のバラードだが、かつては彼のコンサートのラスト・ナンバーにもなった曲。
10メキシカン・コネクション
かつてはコンサートのオープニング・ナンバーだったこともあるインストゥルメンタル曲。メキシカンなリズムをフィーチャーしたもので、本格的にソンやマリアッチを演奏しているわけではないが、イメージによるエキゾティックな擬似メキシカン・サウンドが楽しめる。