ミニ・レビュー
ランディ・マイズナーに代わり、ティモシー・B.シュミットがベーシストとして参加した、79年のラスト作のリマスター盤。ひと言で表わすならば、アダルト・オリエンテッドなポップ・ロック作。だが、バンドのその後を知っているからか、どこか達観した雰囲気も感じられる。
ガイドコメント
名盤をデジタル・リマスター復刻。ベーシストとしてティモシー・シュミットが加入。陰鬱な官能美に包まれた70年代最後のアメリカン・ドリームを体現。実質上のラスト・アルバムでもある。
収録曲
01THE LONG RUN
ヘンリーのヴォーカルをフィーチャーしたメンフィス・ソウル調のポップ・ソング。ウォルシュのスライド・ギターとフェルダーのオルガンがサウンドの基調になっている。自分たちに言い聞かせるように「先はまだ長いのだから」と繰り返す歌詞も印象的。
02I CAN'T TELL YOU WHY
03IN THE CITY
04THE DISCO STRANGLER
急き立てるようなギター・リフに先導されたファンク調サウンドをバックに、ヘンリーが歌うシニカルなアンチ・ディスコ・ソング。ディスコ・ブームの真っ只中だった79年ならではの産物だが、“ディスコの絞殺魔”というB級映画ばりに物騒なタイトルがおかしい。
05KING OF HOLLYWOOD
ヘンリーとフライの歌声を重ね合わせた別人ヴォーカルをフィーチャーした曲。女優の卵を食い物にするハリウッドの悪徳映画プロデューサーを皮肉った歌詞が辛辣。フライ、フェルダー、ウォルシュが順番に個性的なギター・ソロを披露する構成も楽しい。
06HEARTACHE TONIGHT
07THOSE SHOES
夜の街に出掛ける女性に警告する歌。彼女の気持ちを象徴する小道具として“靴”を選んでいるところが巧い。ウォルシュとフェルダーがトーキング・モジュレーターを駆使したギター・サウンドで、この曲の不気味な雰囲気をさらに増幅させている。
08TEENAGE JAIL
極端なダウン・テンポによるダークでヘヴィなバラード。牢獄で自分を見失ってしまった10代の若者に、フライ&ヘンリーが苦い言葉で語りかける。神経を逆撫でするようなフライのシンセサイザー・ソロとヒステリックに泣き喚くフェルダーのギター・ソロも印象的。
09THE GREEKS DON'T WANT NO FREAKS
60年代ロックンロール調のパーティ・ソング。米国南部の大学のフラタニティ・クラブのパーティの模様を皮肉っぽく描いたもので、ジミー・バフェットとザ・モンスタートーンズがバック・ヴォーカルで参加し、パーティを大いに盛り上げている。
10THE SAD CAFE
イーグルスのロード・マネージャーだった、故ジョー・バリックに捧げられた感動的なバラード。デビュー以前のイーグルスが集まっていたロサンゼルスのクラブ“トルバドール”での思い出をヘンリーが歌っている。デヴィッド・サンボーンのサックス・ソロも聴ける。