ミニ・レビュー
1972年に発表されたイーグルスのデビュー作のデジタル・リマスター盤。あらためて聴き直してみると、リズムを含めて相当にソウルっぽいニュアンスが強かったことに気が付くはず。後の展開を考え合わせて聴くと、さまざまな発見があり、今なお新鮮な輝きを放っている。
ガイドコメント
名盤をデジタル・リマスター復刻。新時代のウェスト・コースト・ロックの幕開けを告げた、72年の1st。ジャクソン・ブラウンと共作した「テイク・イット・イージー」はあまりにも有名。
収録曲
01TAKE IT EASY
フライとジャクソン・ブラウンとの共作曲。ロサンゼルス・ロックの最終ランナーとして走り始めたイーグルスの新しさは、60年代の夢から醒めた男が70年代の荒野に戸惑いながらも「気楽に行こうぜ」と自分に言い聞かせる、このデビュー曲に象徴されている。
02WITCHY WOMAN
後期のミステリアスなサウンドを先取りしたような曲。ヘンリーのハスキーなヴォーカルとネイティヴ・アメリカン風味のヘヴィなサウンドをフィーチャーし、神秘的な魔女のような女性について歌っている。全米12位のデビュー曲に続いて、全米9位のヒットを記録。
03CHUG ALL NIGHT
フライが書いたロックンロール調のラブ・ソング。メロウな印象の1stアルバムの中では異色のハード・ロック・サウンドが聴ける曲のひとつ。性的な比喩を多用した歌詞も意外に凝っているし、言葉の選択や韻の踏み方などのセンスもフライらしい。
04MOST OF US ARE SAD
フライが書いたロッカ・バラード。ロンドン録音による南カリフォルニア風味の異国情緒が心地よい。マイズナーの歌声を美しいコーラスと眠たげなリード・ギターが効果的にサポート。簡潔な言葉遣いで複雑なニュアンスを表現しようと試みた歌詞も面白い。
05NIGHTINGALE
フライの親友ジャクソン・ブラウンが書いた曲。まるで最高品質のドラッグについて語るかのように最愛の女性について歌ったラブ・ソング。軽快なビートと流麗なコーラスをバックに、デトロイト出身の伊達男フライがセクシーなヴォーカルを披露している。
06TRAIN LEAVES HERE THIS MORNING
リードンとジーン・クラークとの共作によるホーボー・ソング。マリファナの香りも漂うダルいカントリー・フィーリングと美しいヴォーカル・ハーモニーが心地よい。かつてリードンが在籍していたディラード&クラークのオリジナル・ヴァージョンも存在する。
07TAKE THE DEVIL
元ポコのマイズナーが書いたブルージィなバラード。自分を導いてくれと神に祈る唄だが、歌詞には悪魔も登場するせいか、イーグルスの特徴のひとつでもあった不穏で不吉なムードが基調。終盤の荒々しいギター・ソロがそれをさらに増幅している。
08EARLYBIRD
早起き鳥の鳴き声から始まるイーグルス版“アリとキリギリス”の唄。バンジョーのアルペジオとスライド・ギターをバックに、卓越したヴォーカル・ハーモニーを披露する。自由なワシを称え、働き者の早起き鳥を皮肉っぽく描いた歌詞はヒッピー仕様か。
09PEACEFUL EASY FEELING
同世代のシンガー・ソングライター、ジャック・テンプチンが書いたラブ・ソング。フライのメロウな歌声とカントリー・ロック調の爽やかなサウンドが心地よい。初期のイーグルスのパブリック・イメージを決定した曲のひとつ。全米チャート22位のヒットを記録。
10TRYIN'
マイズナーが書いたロック・チューン。メロウな1stアルバムの中では最もハード・ロッキンなサウンドが聴けるが、やたらに努力を強調する真面目な歌詞がマイズナーらしい。初期のイメージとは異なる曲だが、これもイーグルスの選択肢のひとつだった。