収録曲
01サッド・サッド・サッド
アルバムのオープニングを飾るのにふさわしい、勢いあふれるアップ・テンポのロックンロール・ナンバー。歌詞には力強く前向きなメッセージが込められ、ミック・ジャガー流の応援歌ともいえそうな内容になっている。すべてのパートの演奏が実に生き生きとしており、そのあたりも本作の聴きどころといえるだろう。
02ミックスド・エモーションズ
アルバム『スティール・ホイールズ』(89年)からのヒット・シングルであり、この時期のストーンズを代表する一曲。いかにもストーンズらしいアップ・テンポのキャッチーなサウンドや、サビの部分でのぶ厚いコーラスで盛り上がる感じとか、聴きどころは多く、聴くたびにワクワクしてしまう名曲といえるだろう。
03テリファイング
どこかミック・ジャガーのソロ・アルバムっぽいテイストも感じさせるトラックで、ギターのリフが先導するソリッドなサウンドに乗り、ミックのセクシーなヴォーカルの魅力が全開している。オルガンやデジタル・シンセ、ミュートを効かせたトランペットなど、サウンド面での新鮮な味付けも素晴らしい効果をもたらしている。
04ホールド・オン・トゥ・ユア・ハット
ミック、キース、ロニー・ウッド、チャーリー・ワッツの4人でレコーディングされたという、ライヴ感あふれるハードでストレートなロックンロール・チューン。アルバム『スティール・ホイールズ』収録曲の中でも、最もシンプルでノリ一発といった感じのナンバーなので、アタマでなくカラダで聴くのが正解でしょう。
05ハーツ・フォー・セール
ボトムが太くて泥臭いサウンドによるミディアム・テンポのナンバー。歌詞で歌われているのは、浮気性の男による心の葛藤の様子だろうか。後半で聴けるミックのブルージィこのうえないハーモニカも実にカッコよく決まっていて、こうしたタイプの曲をやらせたら、やはりストーンズの右に出る者はいない。
06ブラインデッド・バイ・ラヴ
ミックによると「カントリー・メキシカン・バラード」だという本作は、ストーンズが時々作るカントリー調作品の中でも、屈指の味わいを持った名曲。こうした曲を聴くと、かつてのストーンズとグラム・パーソンズの交流を思い出さずにはいられない。フィドルやマンドリンを配し、ブリティッシュ・トラッドっぽい味わいがするのもポイント。
07ロック・アンド・ア・ハード・プレイス
アルバム『スティール・ホイールズ』の中では「ミックスド・エモーションズ」と並ぶ人気曲でもある、胸のすくようなゴキゲンなロック・ナンバー。ミックいわく「政治的なメッセージを含んだ、ハングリーでタフな曲」とのことで、70年代初頭の頃の彼らを思い出させるという意味でも、いかにもストーンズらしい曲といえる。
08キャント・ビー・シーン
キース・リチャーズがリード・ヴォーカルを取るナンバー。キースならではの味わいに満ちたヴォーカル&ギター・プレイが最高の聴きどころであるのはもちろんだが、ドコドコと連打される特徴的なドラミングは、キースの好きなソウル・レーベルであるハイ・サウンドを模した感じで、このあたりにも思わずニヤリとさせられる。
09オールモスト・ヒア・ユー・サイ
もともとはキースのソロ・アルバム『トーク・イズ・チープ』(87年)用に、キースとスティーヴ・ジョーダンが共作した曲だったという。その後、ミックが歌ったほうが合うということでストーンズのレパートリーとなったが、結果シングル・カットもされた人気曲となった。悲しげなトーンのミディアム・バラード。
10コンチネンタル・ドリフト
かつてのメンバー、ブライアン・ジョーンズが生前アプローチしていたジャジューカのことを思い出しながらレコーディングされた、エスニック色の濃いナンバー。アジア〜アラブ〜アフリカetc.……と、さまざまな地域の音楽が渾然一体となっているバック・トラックはもちろんのこと、アラブっぽい節回しで歌うミックのヴォーカルも印象的だ。
11ブレイク・ザ・スペル
ブルージィでエスニックなナンバー。ミックの歌い方なども含め、どこかトム・ウェイツっぽい感じもする作品だ。ミックの吹くブルース・ハープが、サウンド全体をより妖しげな方向へと誘っているのも印象的で、ヴォーカルとハーモニカで楽曲を先導するアプローチは、まさにストーンズのルーツであるブルース音楽そのものだ。
12スリッピング・アウェイ
キース・リチャーズがリード・ヴォーカルを取る、サザン・ソウル風バラードの逸品。「ユニバーサル・ロマンティズムを感じさせる曲」とキース自身もコメントしているように、非常に情感込めて歌いこんでいる感じが堪らない魅力となっている。曲の中盤あたりからシャウト・ヴォーカルで熱くからんでくるミックも最高にカッコイイ。