ガイドコメント
75年発表のオリジナル・アルバムのリマスター低価格再発盤。96年の再発時のボーナス・トラックには、これまでブートレッグでしか聴けなかったライヴ音源が収録され、ファンを喜ばせた。
収録曲
01SLIP KID
カウベルをフィーチャーしたドラム・マシン仕様のルーズなリズムに乗って「自由になるための簡単な方法なんてない」という内容の歌詞をロジャーとピートが交互に歌う。ダルい気分を強調するような演奏だが、キャッチーなフックのコーラスが救っている。
02HOWEVER MUCH I BOOZE
軽快なカントリー・ロック・サウンドに乗って、ピートが自虐的な歌詞を歌う。米国西部の荒野を馬で旅しているようなリフとリズムが心地よい。執拗なまでに繰り返されるフックのキャッチコピーは「逃げ道はない」。陽気な音楽と暗い歌詞のミスマッチが面白い。
03SQUEEZE BOX
覚えたばかりのアコーディオンでピートが書いたカントリー調のポップ・ソング。単純すぎるほどの曲調に下ネタの歌詞がよく似合っている。ピートはアコーディオン、ギター、バンジョーをプレイし、バンジョーでのソロも披露。
04DREAMING FROM THE WAIST
ザ・フーならではの音楽的な要素を詰め込み、さらに性的な妄想を満載したピートの曲。ロジャーのシャウトと夢見るようなコーラス、ジョンのリード・ベースとピートのリード・ギター、そしてキースの饒舌なドラミングが高いテンションを最後まで維持している。
05IMAGINE A MAN
ピートが書いた美しいバラード。アコギとピアノを使った清らかなサウンドとロジャーの柔らかな歌声が心地よい。ドラマティックな展開も彼ららしいが、キースのドラミングが効果的にサポートするフックでのロジャーとピートの絶妙のハーモニーもザ・フーならでは。
06SUCCESS STORY
ギター・リフを主体にした比較的シンプルな曲。リード・ヴォーカルはロジャーだが、作者のジョンもあの低音ヴォイスを披露している。“昔は楽しかったのに”というのが基本的なトーンだが、自分たちのキャリアを皮肉っぽく描いた歌詞はいかにもジョンらしい。
07THEY ARE ALL IN LOVE
美しい音楽を皮肉っぽい歌詞が裏切るピートのバラード。ソフト・タッチのピアノとアコギが奏でるジェントルなサウンドに乗って、崩壊寸前のバンドの様子をロジャーがメロディアスに歌ってみせる。キャッチーなフックの美しいコーラスも虚しく響く。
08BLUE RED AND GREY
チープなウクレレと活気のないブラス・バンドをバックに、「僕は一日のすべての時間が好きだよ/君のことを想っていれば」とピートが歌うバラード。他愛のないラブ・ソングのようにも思えるが、南フランスに出掛けるような連中を皮肉っているのかもしれない。
09HOW MANY FRIENDS
ザ・フーらしいドラマティックなバラード。ギターのオブリガードとピアノを主体にしたサウンドをバックに、「俺の本当の友達って何人くらいいるのだろう?」とロジャーが歌う。裏声と地声を巧みに使い分けたロジャーのヴォーカルが心地よく響く。
10IN A HAND OR A FACE
多重録音されたギター・リフと眠たげなコーラスをバックに、ロジャーが人類の歴史や浮浪者の生活について歌う。カルマやDNAについて言及しているようにも感じられる歌詞にはピートらしい啓蒙的なニュアンスもあるが、彼の遺書ではないかという説もある。
11SQUEEZE BOX
76年6月12日、英国のスワンジー・フットボール・グラウンドでのライヴ録音。キースのMCによる曲紹介に続いて、当時の最新ヒット曲のエレクトリック・ヴァージョンが演奏される。バンジョーやアコーディオンも悪くはないが、やはりザ・フーはこの編成が最高。
12BEHIND BLUE EYES
76年6月12日、英国のスワンジー・フットボール・グラウンドでのライヴ録音。名盤『フーズ・ネクスト』を代表する名曲中の名曲のライヴ・ヴァージョン。キースのドラミングはやや控えめのようだが、その代わりにジョンのリード・ベースが活躍している。
13DREAMING FROM THE WAIST
76年6月12日、英国のスワンジー・フットボール・グラウンドでのライヴ録音。全員がまったくミスせずに完奏しているという奇跡的なヴァージョン。ロジャーのヴォーカルとコーラスも見事だが、全篇を支配するジョンの饒舌なリード・ベースが圧巻。