ガイドコメント
自ら設立したスワン・ソング・レーベルからの第1弾リリースとなった、75年の6thアルバム。2枚組にもかかわらず予約だけで100万枚を突破したという驚異の作品。ビルボード1位を獲得。
収録曲
[Disc 1]
01CUSTARD PIE
ブッカ・ホワイトやサニー・ボーイ・フラーらのブルース・クラシックを下敷きにしたブルージィなファンク・ロック。ペイジのギター・リフも秀逸だが、ジョーンジーのクラヴィネットも効いている。プラントもマウスハープを披露。だが最大の功労者はやはりボンゾか。
02THE ROVER
ボンゾの擬似ファンク調のリズム・パターンから始まる曲。前作『聖なる館』のアウトテイクにダビングとリミックスを施したもの。ペイジのギター・リフは例によって尊大で自己言及的だが、常に理想主義的なプラントは結束の必要性について歌っている。
03IN MY TIME OF DYING
ボブ・ディランも歌っていたブルースの古典をZEP流に改造した曲。プラントはブラインド・ウィリー・ジョンソンの歌詞を下敷きにしている。ボンゾとジョーンジーの強靭なファンク・ビートに馬乗りになったペイジが狂騒的なボトルネック・ギター・ソロを披露する。
04HOUSES OF THE HOLY
前作『聖なる館』のアウトテイク。タイトル曲をアルバムから外すのは例外的だが、同じタイプの「ダンシング・デイズ」を彼らは選択した。ダンサブルなギター・リフとファンク・ビートも似ているが、何よりも陽気な肯定性が双生児のように似通っている。
05TRAMPLED UNDER FOOT
ジョーンジーのクラヴィネットをフィーチャーしたZEP流ファンク・ロック。車を性的な比喩として使った歌詞は、ロバート・ジョンソンの「Terraplane Blues」から引用したものだ。中期から後期にかけてのライヴでは、欠くことのできないレパートリーとなった。
06KASHMIR
ケルト、インド、アラブというZEP三大要素の集大成とも言える傑作。ペイジの“CIA”チューニング・ギターとアラブ風ストリングスによる画期的なリフを基調に、SFの世界へと迷い込んだような、眩暈がするほどエキゾチックな異次元サウンドが展開される。
[Disc 2]
01IN THE LIGHT
「イン・ザ・モーニング」というリハーサル・ナンバーから生まれた曲。低く垂れ込める黒雲の如きキーボード・サウンドから始まり、何度かの転調やリズム・チェンジを経て、プラントが「誰もが光を求めている」と歌い上げる感動のフィナーレへと辿り着く。
02BRON-YR-AUR
『III』のアウトテイク。タイトルは、1970年の春に彼らが訪れたスノウドニアのコテージの名。ペイジの生ギターによるインストゥルメンタル曲。映画『永遠の詩』のサントラで使用され、彼らがコンサート会場へと向かうシーンで流れた。
03DOWN BY THE SEASIDE
1970年の春、“ブロン・イ・アー”で書かれた曲。ニール・ヤングの音楽にインスパイアされたもので、当初はよりフォーキーな曲だったが、ここではややエレクトリックな編曲を採用している。ヤングにも似たような題名の曲はあるが、音楽的に近いのは他の曲。
04TEN YEARS GONE
曲名が彼らのレーベル名に用いられた幻のインストゥルメンタル曲「スワン・ソング」を基に作られた曲。失われた至上の愛についてプラントは思い入れたっぷりに歌う。多重録音されたペイジのエレクトリック・ギターは、繊細さと力強さを兼ね備えている。
05NIGHT FLIGHT
『IV』のアウトテイク。ジョーンジーのアイディアを基にしたもので、彼のオルガンが基調になっている。レスリー・スピーカーを通したペイジのギター・サウンドも印象的。プラントの力強いシャウトがボンゾの頼もしいドラミングとともにバンドを牽引している。
06THE WANTON SONG
強靭なZEP流ファンク・ビートがサウンド全体を牽引する曲。レズリー・スピーカーと逆回転エコーを駆使したペイジのユニークなギター・サウンドが独特の雰囲気を作り出している。性的な比喩を満載した歌詞を歌うプラントのヴォーカルも精力的。
07BOOGIE WITH STU
『IV』のアウトテイク。「ロックンロール」の録音に参加したイアン・スチュワートとのジャム・セッション。リッチー・ヴァレンスの「Oh! My Head」を下敷きにしたもので、スチュならではのブギウギ・ピアノがほぼ全篇でフィーチャーされている。
08BLACK COUNTRY WOMAN
『聖なる館』のアウトテイク。アンプラグドなサウンドで奏でられるフォーク・ブルース。そこはかとなく疲労感を漂わせながらも饒舌なプラントのヴォーカルとマウスハープが魅力的。ミック・ジャガーの別荘の庭で録音されたため飛行機の爆音が入っている。
09SICK AGAIN
テンションの高いハード・ロック・チューン。1973年の全米ツアーで出会った米国産グルーピーについてプラントは歌っている。ボンゾの激烈なドラミングがバンドを牽引し、ペイジの荒々しいギター・リフが狂騒的なツアーの日々をリアルに再現している。