ガイドコメント
冒頭の「アキレス最後の戦い」に象徴されるヘヴィなサウンドが盤面全体に緊張感を持たせている。80年にジョン・ボーナムの死により12年に及ぶ活動に終止符を打った彼らの、後期最高傑作と名高い76年の7thアルバム。
収録曲
01ACHILLES LAST STAND
二つの曲を合体させた後期ZEPの傑作。凄まじい勢いで疾走するボンゾのドラミングがバンドを先導する。多重録音されたペイジの劇的なギター・ワークも秀逸。ギリシャ神話の英雄アキレスを題材にした物語を歌うプラントのヴォーカルも素晴らしい。
02FOR YOUR LIFE
麻薬を題材にした麻薬的な曲。執拗なまでに繰り返される刺々しいギター・リフに乗って、プラントが巧みに抑制されたヴォーカルを聴かせる。ペイジがブルーのストラトキャスターで奏でるリフが頭の中で反響し、地味ながらクセになってしまう不思議な曲。
03ROYAL ORLEANS
ニューオーリンズのホテルの名を冠した曲。ミーターズばりのファンク・ビートを叩き出すボンゾのドラミングとペイジの性急なギター・リフにうながされて、実体験に基づいているらしい当地での挿話をプラントが歌う。どうやら主人公はジョーンジーらしい。
04NOBODY'S FAULT BUT MINE
ブラインド・ウィリー・ジョンソンの同名曲を下敷きにした曲。ボンゾ流ファンク・ビートに先導された新型ブルース・ロック。マウスハープをフィーチャーした演奏は初期ZEPを思い出させるが、得意のブレイクを効果的に駆使したサウンドはより洗練されている。
05CANDY STORE ROCK
後期ZEP流ロカビリー・チューン。ファンク経由のロカビリー・ビートに乗って、ペイジはスコッティ・ムーアばりのギターを奏で、プラントはエルヴィスばりの歌声を披露する。20年ぶりに蘇生された改造ロカビリー・サウンドがZEPの独創性を証明している。
06HOTS ON FOR NOWHERE
『フィジカル・グラフィティ』のためのセッションから生まれた曲。聴く者をわくわくさせるようなリズムに乗って、プラントが歌いたいことを(やや寓意的に)歌い、ペイジが弾きたいように(やや風刺的に)弾いてみせる。陽気な即興性を基調にした楽天的な曲。
07TEA FOR ONE
後期ZEP版の「貴方を愛しつづけて」。初期ZEPの緊迫感あふれる名演とは異なり、大人の余裕を感じさせる仕上がりのスロー・ブルース。「1分が一生のように思える」と歌うプラントも、抑制されたプレイを聴かせる3人も、すでに20代の若者ではない。